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利潤(だけ)を追い求める——世界一 たるディアジオには、そうなってほ しくない |
同工場は1820年に創業者ジョン・ウォーカーがオープンさせた、ジョニー・ウォーカー発祥の地。
2009年にジョン・ウォーカー&サンズの親会社であるディアジオ(英)が、経営・業務効率化を掲げ同工場などの閉鎖を発表。
その際、キルマーノックの街ではサッカークラブ、キルマーノックFC(スコティッシュ・プレミアリーグ)の選手や市民が参加した、2万人規模のデモが行なわれた。
以降も存続運動や、スコットランド議会などによるディアジオへの存続要請が行なわれていたが、その3年間の戦いにも終止符が打たれることになった。
Staff weep as final Johnnie Walker bottle leaves ‘home’(スコッツマン)
今回はスコッツマン、ヘラルド・スコットランドに掲載された従業員たちの声を取り上げる。
エレーン・ニコルさん(1972年より同工場に勤務)「本当に悲しい。引退するまでここで働こうと決めていたのに、本当に信じられない気持ち」
エリザベス・レイノルズさん「この場所は私の家同然の場所であったし、ともに、同僚は家族同然だった。本当に今日が最後の日とは信じられない」
ジャニス・ディーンさん(品質管理を担当)「ディアジオは、キルマーノックこそがジョニー・ウォーカーそのものであることを理解していないのよ。この出来事は街から心臓を剥ぎ取ったようなもの。700人(同工場の従業員数)の家族は去ってしまった」
エステル・マクナイトさん(34年間、ボトリングの生産ラインを担当)「ジョニー・ウォーカーはとても偉大な会社だった。しかし、会社がディアジオの下に渡ったとき、全てが変わってしまった。ディアジオは何をするにも利益を求めるだけだった」
また、近隣で新聞販売、酒屋を営むピア・シンフォリアニさんは、次のように語っている。
「私の家は100年間、キルマーノックで商売を続けてきた。キルマーノックからジョニー・ウォーカーを取り上げるということは、テネシーからジャック・ダニエルを取り上げるということと同じことだよ。ディアジオは『ジョニー・ウォーカー』の名前を買った。だけど、ジョニー・ウォーカーはキルマーノックの人々のものだったんだ。少なくとも、今日まではね」
最後にディアジオ広報のポーリン・ルーニー氏のコメント。
「従業員に影響が出ないこと、可能な限りこのビジネスに留まることが出来ること——今回の閉鎖計画にあたっては、そこに焦点を絞った。ヒルストリート(ボトリング工場の所在地)の200名近い人員が、ディアジオで新しい職場を見つけられたことを嬉しくおもう。しかし、この職に留まれなかった人間が発生してしまったのは残念なことだ。また、閉鎖という難しい工程に取り組んでくれた、全てのキルマーノックのスタッフは大きな賞賛を受けるに値する」
あえてディアジオを擁護すれば、彼・彼女らとて営利企業であり——たとえ世界一の酒類コングロマリットとはいえ——、一寸先は闇の世界を生きている。
慈善団体ではないのだから、利益を追求するのは当然のことだ。
しかし企業活動には常に、説明責任が伴うということも自覚しなければならない。
2011年度決算では、約26億ポンド(約3,400億円)の営業利益を挙げ、約17億ポンド(約2,200億円)のフリーキャッシュフローを積み重ねたとディアジオは発表している。
(フリーキャッシュフローとは、本業で得た現金収入額から、設備投資などに費やした支払額を引いた、手持ちの現金額)
キルマーノックを閉鎖しなければ、これらがどのように失われるかということをディアジオは明示しなければならない。
これはCSR(企業の社会的責任)という点だけでなく、ブランドイメージの保持にも関わる問題だ。
前述したシンフォリアニさんのコメント通り、ジョニー・ウォーカーのブランド力はキルマーノックで生まれ、育まれてきたもの。
そのブランドイメージが損なわれれば当然、業績にも跳ね返り、すなわち企業の力を削ぐということにつながる。
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