2012年11月30日金曜日

スコットランド議会で「スコッチ・ウイスキー展」――SWAの創立100周年記念事業(スコッツマン)

SWAが展覧会に先立ち配布したポスト
カード
 スコットランド議会議事堂メインホールで11月29日から、「Scotch Whisky: From Grain to Glass Exhibition(スコッチ・ウイスキー〜穀物からグラスまで〜展)」が開催されている。スコッチ・ウイスキー協会(SWA)の創立100周年を記念するもの。

Whisky honoured at Scottish Parliament(スコッツマン)
http://www.scotsman.com/lifestyle/food-and-drink/features/whisky-honoured-at-scottish-parliament-1-2664298

 同展では、レシピなどの資料、映像のほか、ミニチュアサイズのポットスティル、樽なども展示する。また、ウイスキーに関わる人々についても取り上げ、モルト製造業者、樽職人、マスターブレンダー、マーケティング担当者など、それぞれが持つ技術や仕事への情熱を紹介する。

 「ウイスキーの初心者でも愛好家でも、この展覧会から新しい何かを学ぶことができる」とSWAのギャヴィン・ヒューイット会長。またSWAの今後について同会長は「昨年、スコッチ・ウイスキーの輸出は42億ポンド(約5,600億円)に達し、1万人以上の雇用を産み出している。この100年間、我々はウイスキーをプロモートし、そして保護してきた。次の100年、さらにその先も、同じように活動していく」と展望を語った。

 会期は来年1月2日まで。開館時間は月・金・土曜・休日=10時〜17時、火・水・木曜=9時〜18時30分(最終入館は30分前まで)。入場無料。


<関連記事>
英国、アルコール飲料への最低価格導入へ——酒類業界は反発(USフロントライン他) 「アメリカンラム協会」が発足――バカルディ、ディアジオなどの大企業に対抗(イグザミナー)

2012年11月29日木曜日

バカルディUSA、「ボンベイサファイア・イースト」をリリース――アジア産スパイスを使用(マイアミヘラルド)

 バカルディUSA(米フロリダ州)は、ジン「ボンベイサファイア・イースト」をリリースする。これまでのボンベイサファイアに、スパイスとしてタイ産レモングラスやベトナム産ブラックペッパーを加え、アジアのテイストが盛り込まれた商品だ。

Bombay Sapphire East adds Asian flavors to gin(マイアミヘラルド)
http://www.miamiherald.com/2012/11/28/3117862/bombay-sapphire-east-adds-asian.html

 既に昨年、ニューヨークとラスベガスで試験販売されており、4000ケースを売り上げている。同社はこれを成功とし、正式販売に至ったようだ。

 ギルス・ウッディア副社長は「最高のスパイスが、アジアからやってきた。イーストが新たな飲み手をジンカテゴリーに引き込んでくれると信じている」とコメントした。

 アルコール42%で、市中価格は30ドル前後(2500円前後)で販売されている模様。日本を含めた米国以外での販売予定は不明。


<関連記事>
ボンベイサファイアの新工場、来年5月にオープン――歴史的建造物を再利用(ベーシングストークオブザーバー)

2012年11月27日火曜日

ロシア、「Skyy」の商標登録差し止めへ――スカイウオトカ製造元の勝訴で(RAPSI)

 モスクワ商務裁判所は26日、ロシアでの「Skyy」の商標登録を早急に差し止めるよう、ロシア法務情報庁に通告した。「スカイウオトカ(ウォッカ、写真)」を生産するスカイスピリッツ(米カリフォルニア州)が裁判を起こしたことによるもので、同社の主張が認められた形だ。

Premature cessation of Skyy vodka trademark legal protection disputed(RAPSI)
http://rapsinews.com/judicial_news/20121126/265516149.html

 これまで「Skyy」の商標登録をしていたのは、セーシェル共和国(アフリカ)のエスミントンコーポレーション。2004年からロシア国内で「SKY-HI」、あるいは、「HI-SKY」というアルコール飲料を販売しており、商品のスローガンに「Skyy」という言葉を使用していたという。商標登録が完了したのは昨年10月だが、この時点で「『Skyy』の商標をロシア国内で使用しない」という声明をエスミントンは発表していた。(恐らく、このとき既に問題視されていたものと思われる)

 事態を不服としたスカイスピリッツは商標登録差し止めを求め提訴したが、一審は敗訴。しかし、9月に開かれた控訴審で訴えが認められた。

 スカイスピリッツは1992年に設立され、伊酒造大手カンパリの子会社。同社によると、米国で8番目の規模を誇るアルコール飲料メーカーであるという。


<関連記事>
中国の知的財産権問題はウイスキーにも——シーバスが商標権訴訟で敗訴(スコッツマン) メーカーズマークがディアジオ・クエルボに勝訴——封蝋の意匠権問題で(USAトゥデイ)
ロシア政府、アルコール規制策を続々と(SFゲート/ブルームバーグ)

2012年11月26日月曜日

スコッチ・ウイスキーに新たな問題――モルト・大麦の輸入を巡る対立が表面化(スコッツマン)

 スコッチ・ウイスキーの原材料であるモルトを巡って、モルト製造業者と大麦生産者が対立している。

Malt shortfall claim angers NFUS chief(スコッツマン)
http://www.scotsman.com/business/food-drink-and-agriculture/malt-shortfall-claim-angers-nfus-chief-1-2654181

 ウイスキー蒸留所やビール醸造にモルトを供給するクリスプモルティンググループ(英イングランド)のボブ・キング・コマーシャルディレクターは、年内にもモルトをスコットランド域外から調達したいという意向を示す。世界的なウイスキー需要が高まりから、スコットランドで生産される大麦のみでは供給が間に合わないというのが、その根拠だ。

 キング・ディレクターは先週、スコットランドのオールメルドラムやパースにて開いた大規模農業経営者向けセミナーで「スコッチ・ウイスキーはスコットランドでつくられなければならない。しかしモルトは、どこでもつくることができる」と理解を求めた。

 一方、これに反発するのはスコットランド農業組合のジョン・ピッケン副代表だ。ピッケン副代表は組合内に設置される合同生産高評議会の議長を兼ねており、スコットランドの大麦生産高は需要に対応できている、と主張する。そして、キング・ディレクターの発言は、スコットランドの大麦生産者を脅迫するものだ、とも批判している。

「適正な価格とサプライチェーンが整えられれば、生産者は需要に対応する」

 クリスプが輸入に傾くスタンスを、スコットランド農家への値下げ圧力だと示唆する。

 この反論を聞いたキング・ディレクターは「誤解である」と、次のようにコメントした。
「私が大麦を輸入したいわけではない。(現状で)モルティングされる大麦は、全てスコットランド域内から調達している。しかし我々の顧客は、スコットランドで賄えなくなればモルトを輸入しようとするだろう」

 モルト製造業者、蒸留業者は今後10万トンのモルトが不足すると見ている。「蒸留業者はスコットランドの生産者がつくったモルトを欲しがる。理由なく、費用のかかるイングランド産、大陸産のものを手に入れようとするだろうか? (キング・ディレクター)」と、あくまで需要増に対する措置である点を強調する。

 スコットランドでこれ以上、大麦の作付面積増加が困難なことも、原因のひとつだ。農家はエタノール向け植物や小麦など、より収益性の高い農産物の作付面積増加を求める。元記事のスコッツマンでは、これ以上の大麦畑の減反をなくすこと、そのために生産高を増加させる新種を農家が採用できる状況になることが、解決への希望の光だとしている。

 一見、好況に感じるスコットランドの酒造業界。しかし、空前のウイスキー需要の高まりは、その影で新たな問題が露見している。

2012年11月25日日曜日

ドリンクスビジネスが選ぶ「変わったウオトカ・トップ10」②(ドリンクスビジネス)

 きのうに引き続き、ドリンクスビジネスが選ぶ「ビザールウオトカ(ウォッカ)・トップ10」をお届けする。

TOP 10 BIZARRE VODKA VARIANTS(ドリンクスビジネス)
http://www.thedrinksbusiness.com/2012/11/top-10-bizarre-vodka-variants/

<第5位>ガンニバル・ラムフレーバード・ウオトカ(イアン・バレル氏プロデュース)
 英国ラム大使などを務めるイアン・バレル氏(写真右)がプロデュースした商品で、帝政ロシアに仕えたアフリカ出身の軍人、ガンニバルから名付けられたもの。4月1日にリリースされた。

 とはいっても、完全なエイプリルフール商品というわけではなく、オフィシャルサイトが用意され、バレル氏がプロデュースするコットン(英ロンドン)というレストランにサンプルが置かれたという。また、ロンドン市内の小売店「ゲリーズ」にも、実際に商品が置かれていたとのこと。

 フレーバードウオトカというよりも、ウオトカと3種類のラムのブレンドと言った方が正しそうだ。


<第4位>ナガ・チリ(メーカー:ホットイナフウオトカ)
 当サイトでも2月11日にお伝えしたフレーバードウオトカ。そのときは10万スコヴィルという数値のものを紹介したが、現在では25万スコヴィルのものもオンラインショップ「マスターオブモルト」で販売されている(スコヴィルとは唐辛子の辛さを表す単位)。


<第3位>メアリー・ジェーンズ・プリモヘンプウオトカ(メーカー:クイーンオブスピリッツ)
 ヘンプとは、麻のこと。カナダで製造・販売されている。

 元記事へのリンクをご覧いただければ、商品画像からかなり妖しい雰囲気が伝わってくる。ただ、もちろん合法商品だ。



<第2位>スコーピオン(メーカー:エディブル、写真左)
Edible - Scorpion Vodka 70ml ウオトカ愛好家の方にとっては「何を今さら」という感も持たれるかもしれない。今回、ドリンクスビジネスで紹介されているものは、日本で知られている「スコルピオ」ではなく、エディブルというメーカーがつくった「スコーピオンウオトカ」という商品。英百貨店のハーヴェイニコルズで販売されている。




<第1位>スモークド・サーモン(メーカー:アラスカディスティラリー)
 こちらも以前、当サイトでお伝えした商品。残念ながら、米国内17州のみでしか販売されていないのだが、当サイトで取り上げた際は全記事の中で9位のPV数となっている。他の日本語メディアでも取り上げられており、日本でも注目を集めるか。

2012年11月24日土曜日

ドリンクスビジネスが選ぶ「変わったウオトカ・トップ10」①(ドリンクスビジネス)

 酒類業界専門誌「ドリンクスビジネス」(英)の11月号は、ウオトカ(ウォッカ)特集であったという(ソースは元記事)。最近の酒造業界の動きとして、プレミックスカクテルやフレーバード商品のリリースが相次いでいるが、同誌のオフィシャルサイトではウオトカにさらに踏み込んで「ビザールウオトカ(変わったウオトカ)・トップ10」を掲載している。

 興味深いランキングなので、当サイトでも2回に分けてフォローしたい。

TOP 10 BIZARRE VODKA VARIANTS(ドリンクスビジネス)

 スモアとは北米でキャンプファイアーの際に食される、チョコレート、マシュマロをクラッカーで挟んだ菓子。すなわち同商品は、この菓子のフレーバーを再現したもの。メーカーのスリーオリーブスは、他にも20種類以上のフレーバードウオトカをリリースしている。

 4月8日に当サイトでも取り上げた、ヴァンゴーの「PB&J」がランクイン。PB&Jとは、ピーナッツバターとゼリーのサンドイッチのことで、10位のスモアズと同じく、北米のこどもたちに人気のおやつだ。ヴァンゴーは日本にも代理店を持つが、PB&Jは現在のところ、正規販売していない模様。


 スパイストパンプキンとパンプキンサイダーの風味付けがなされたもの。
 メーカーのピナクルはホワイトロックディスティラリーズ(WR、米)の保有ブランドであったが、WRがビーム(米)に買収されたため、現在はビーム傘下となっている。同社買収時の当サイト記事では、WRを「ピナクルの製造元」と記載したが、今回の元記事によるとピナクル自体はフランスでつくられているという……と、さりげなく訂正しておく。

 おそらくワイン愛好家の方にとっては馴染み深いと思われる、ソーヴィニォンブラン(白ワイン向けのぶどう品種)のフレーバードウオトカ。アルコール14%であり、リリース時には「普段、ウオトカを飲まない女性などもターゲットにした」といった報道もされていた。

あすへつづく)


<関連記事>
英誌・調査会社が共同で酒類ブランドランキングを発表(アドエイジ)
マリネル・フィッツシモンズが選ぶ、香港の十大ウイスキーバー①(ドリンクスビジネス)

2012年11月21日水曜日

マッカラン、「マスターオブウッド」にマクファーソン氏を任命――業歴30余年の樽職人(ウイスキーマガジン)

 スコッチシングルモルト・ウイスキーのマッカラン蒸留所は、「マスターオブウッド」にスチュアート・マクファーソン氏(写真)を任命したと発表した。前任のジョージ・エスパイ氏は10月1日に引退しており、既にマクファーソン氏が就任している模様。


The Macallan Appoints New Master of Wood(ウイスキーマガジン)

 マクファーソン氏は1979年、マッカランと同じくエドリントングループに属する樽製作企業、クライドクーパレージに入社。2001年にはマネージャーとなった。現在、製造担当16名、修理などのサービス担当7名の職人と、3名の見習いを率いている。

 マクファーソン氏によれば、ウイスキーが持つアロマ、フレーバーの6割は樽によって決まるといい、マスターオブウッドとして今後、マッカランが使用するオーク材についての情報提供や助言を行なっていく。また、マッカランのブランド養成プログラムにおいても、木材の視点から関わっていくという。

 エドリントングループのケン・グリアー・モルト担当ディレクターは「スチュアートという素晴らしいメンバーが、マッカランのチームに加わった。マスターオブウッドの役職は、マッカランの核心である高いクオリティを維持する点において、不可欠なものだ」とマクファーソン氏の就任を歓迎する。

 またマクファーソン氏本人は「1979年に樽職人として働き始めてから、これは究極の仕事かもしれないと感じてきた。そして私が木や樽で得てきた実践的な経験を用いて、事が前に進むようにアシストするという時が来た。マッカランのマスターオブウッドになるということは、私にとって自然な事の運びなのだと思う」とコメントした。


<関連記事>
エドリントングループが決算発表(BBC) アードベッグ、宇宙へ行く——米企業がISSで実験(STV)

スカンジナビア航空のパイロット、翼の除氷にウイスキーを使う(ドリンクスビジネス)

 飛行機の整備にウイスキーを使う――スペインで、そのような出来事が起こった。

AIRLINE PILOT DE-ICES WINGS WITH WHISKY(ドリンクスビジネス)
http://www.thedrinksbusiness.com/2012/11/airline-pilot-de-ices-wings-with-whisky/

 16日、ノルウェーへ向けて飛び立つ予定だったスカンジナビア航空機は、スペイン・アリカンテ市内の空港に足止めされてしまった。翼に氷がついたためだ。きちんと除氷しなければ離陸するための揚力が得られず、また仮に離陸できたとしても飛行中は氷が障害となり安全を脅かす。通常、空港には備えつけられているはずの除氷剤も、在庫が切れていたようだ。

 これ以上、遅延させるわけにはいかない、と判断したパイロットは機転を利かせた。機内で提供する予定だったウイスキーボトル6本を取り出し、翼にかけ始めたのだ。アルコール度数の高いウイスキーであれば凍りづらく、除氷剤としての効果を持つと考えたのだろう。

 結局、同機は1時間20分遅れで離陸した。

 この出来事は、同機の乗客であったリンダ・エイプランドさんがノルウェー紙、Aftenbladetに語ったことにより明らかになった(そのため、無事に着陸したものと思われる)。リンク先の元記事には、エイプランドさんが撮影したウイスキーを翼にかけるパイロットの写真が掲載されている。

 なお、今回使われたウイスキーの銘柄は不明。

2012年11月19日月曜日

グレンモーレンジ、IWSC「2012ディスティラー・オブ・ジ・イヤー」を受賞(ウイスキーマガジン)

 グレンモーレンジ蒸留所(英スコットランド)は、国際ワインアンドスピリッツコンペティション(IWSC)が制定する「2012ディスティラー・オブ・ジ・イヤー」を受賞した。同賞はスピリッツ版の「オスカー」として、その年、最も優秀だった蒸留所を表彰するもの。また、「UKスピリッツプロデューサー・オブ・ジ・イヤー」も、2年連続で同時受賞した。

 ディスティラー・オブ・ジ・イヤーの受賞に際し、マスター・ディスティラーのビル・ラムズデン博士は次のようにコメントしている。
「今回の栄誉をとても誇りに思う。我々のチームは、つくり出すウイスキーが常に高品質を保つことを最優先事項にしてきた。尊敬するIWSCによって、そのことが証明されたことを素晴らしく思う」

 また、アレン・ギボンズIWSC代表は「特に今年に関しては、ウイスキー産業が力強く、品質も高かった。そのような競争を勝ち抜いたグレンモーレンジは、彼らが持つ品質の高さを証明している」とグレンモーレンジの栄誉を称えた。

The Glenmorangie Company is named World’s Best Distiller(ウイスキーマガジン)


<関連記事>
アードベッグとバルヴェニー、記念ボトルをそれぞれリリース(BBC他) スコッチ三銃士が米国でモルトウイスキーづくり(ザ・サン)

2012年11月15日木曜日

エドリントングループが決算発表(BBC)

 英酒造大手のエドリントングループは13日、中間決算を発表した。売上高=2億9600万ポンド(約380億円)、税引前利益=8430万ポンド(約108億円)だった(前期比、前年同期比のどちらか不明だが、元記事によれば、それぞれ6%、21%上昇している)。米国、アジア、新興国市場での業績が好調なようだ。

 主に米国では「マッカラン」を中心としたシングルモルト・ウイスキーが、アジアではブレンデッド・ウイスキーが人気だという。また、ブレンデッド「カティサーク」は今年、米国進出25周年を迎え、代理店を変更、ブランドへの投資を拡大していく方針だ。

 なお、同社は非上場企業で、ウイスキー専門の投資グループ「ロバートソン・トラスト」と従業員が株式を持つ。

Whisky firm Edrington reports sharp prise in profits(BBC)
http://www.bbc.co.uk/news/uk-scotland-scotland-business-20318747


<関連記事>
成長の足かせは欧州市場か――ディアジオ、レミーコアントローが中間決算発表(ヨークシャーポスト他)

2012年11月14日水曜日

「アメリカンラム協会」が発足――バカルディ、ディアジオなどの大企業に対抗(イグザミナー)

 ラム蒸留業者の業界団体「アメリカンラム協会」が12日、発足した。米本土を拠点とする企業が中心で、中小規模のメーカー80社以上が参加する。

American Rum Association established to unite domestic manufacturers(イグザミナー)
http://www.examiner.com/article/american-rum-association-established-to-unite-domestic-manufacturers

 米領ヴァージン諸島(USVI)、プエルトリコ(米連邦自治区)のメーカーは参加していない。同協会の趣旨は、アメリカンラムの普及促進、地位向上にあり、大企業による生産が行なわれるこれら地域のメーカーを、排除した格好だ。

 創設者でレイリーン・ディスティラーズ(テキサス州)代表のケリー・レイリーン氏は、次のようにコメントしている。
「『アメリカンラム』の品質基準を確立するときだ。アメリカンラムというカテゴリーや、中小企業である蒸留所の成長を阻害しているのは、USVI、プエルトリコでの不公平な助成金である。助成金を受け取るバカルディやディアジオといったグローバル企業は、何の保障も受けていないアメリカンラムに対して、自由市場での競争を抑圧している。アメリカンラム協会は、こうした悪習を明らかにするとともに、雇用促進など米経済の再興に寄与したい」

 なお、カリブ地域の業界団体である西インド諸島ラム製造者協会が、カリブ共同体を通してディアジオをWTOに提訴する構えも見せている。やはり、USVIでのラム助成金を不当としているためだ。元記事では触れられていないが、2つの協会の主張は一致しており、今後の動向が注目される。


<関連記事>
ディアジオとカリブ諸国間に通商問題が勃発(スピリッツビジネス)
カンパリ、ジャマイカのラム・メーカーを買収(ロイター)

2012年11月13日火曜日

ロシア政府、アルコール規制策を続々と(SFゲート/ブルームバーグ)

With Presidential Adviser and Chairman of the Council for Civil Society Development and Human Rights Mikhail Fedotov (right), First Deputy Chief of Staff of the Presidential Executive Office Vyacheslav Volodin, and Presidential Aide Igor Shchyogolev (far left).
ロシアのプーチン大統領(右から2人目)。
規制は健康なロシア人を生み出すか、それとも
米禁酒法の二の舞になるのだろうか……
ロシア政府が課税、深夜帯の販売規制など、同国民のアルコール摂取を抑制する政策を打ち出している。
国民の平均寿命(68.8歳、ソース)が世界平均を下回るなどの健康問題は、アルコールに原因があると考えているためだ。

Whiskeys face alcohol crackdown in Russia(SFゲート、配信元:ブルームバーグ)

この政策の皮切りとなったのが、2010年のビール増税。
税率を倍増させるもので、2007年と2011年のビール消費量を比較すると2.4%減少しており、ある程度の効果を見せている模様だ。
また、23時から翌朝8時までのアルコール飲料の販売、公共の場所での飲酒、テレビ・ラジオ・看板によるアルコール商品の広告が、既に禁止されている。

マーケティング会社、ユーロモニター(英)のスピロス・マランドラキス(Spiros Malandrakis)アナリストは、「立法によって(アルコール業界が)規制される大きな動きが続いた。クレムリンの怒りを買わぬよう、慎重に動かなければならない」と分析している。

一方、ビーム(米)のマシュー・シャトックCEOは「ロシア市場では、そのような現実を理解することも競争する能力のひとつだ。我々はそれぞれの市場にあるルールの中で競争しなければならない。ときには、ルールの方が動くこともある」と静観する。
ロシアのアルコール産業は昨年、4.6%の市場規模縮小、なかでも国民酒といえるウオトカ(ウォッカ)は4.9%、市場が縮小している。
それにも関わらず、ウイスキーは48%、テキーラは45%、市場が拡大した。
もっとも、未だにアルコール消費量の約8割はウオトカで占められウイスキーは1%のシェアに過ぎないが、消費者の嗜好が変化しているという点は現実に変わりない。
これを受け、ビームはテキーラ「サウザ」、コニャック「クルボアジェ」、スコッチ・ブレンデッド・ウイスキー「ティーチャーズ」のマーケティングを、ロシアにおいて展開している。

ロシア政府は現在、2020年までに1人あたりの年間アルコール消費量を8リットルまで削減する目標を立てている。
ヴィクトル・ズブコフ第一副首相が昨年12月に発表したところによると、以前18リットルだった年間消費量は15リットルとなっており、着実に削減されている。

来年末には酒税をさらに30%、増税する計画がある。
プーチン大統領の目論見通りアルコール消費は減るのか、それとも消費者の嗜好、メーカーの思惑が規制そのものを変えてしまうのか――両者の戦いは、しばらく続きそうだ。


<関連記事>
英国、アルコール飲料への最低価格導入へ——酒類業界は反発(USフロントライン他)

2012年11月12日月曜日

ウイスキー版福袋?――マスターオブモルトが「ザ・ウイスキーアドベントカレンダー」をリリース(ハフィントンポスト)

The Whisky Advent Calendarクリスマスまで、一ヶ月あまり――この時期、ヨーロッパで行なわれる習慣として「アドベントカレンダー」が挙げられる。
様々な仕掛けが隠されたカレンダーの「窓」を1日ずつ開けていき、クリスマスを迎えるというものだ。

そして、このほど「ザ・ウイスキーアドベントカレンダー」(写真)がリリースされた。
スピリッツのオンラインショップ、マスターオブモルト(英)が販売するもので、価格は149.95ポンド(約1万9千円)。
カレンダーには24の窓があり、開くと30ミリリットルのそれぞれ異なるウイスキーが隠されている。
また、ブランド、蒸留所名は明らかにされていないが、どこか1つの窓に50年もののウイスキーもあり、マスターオブモルトの説明では「フルサイズボトルで350ポンド(約4万4千円)はくだらない」ものだという。

ジン版の「ザ・ジンベント(Ginvent)カレンダー」も用意され、こちらは79.95ポンド(約1万円)。

Whisky Advent Calendar Lets You Booze In The Days Leading Up To Christmas(ハフィントンポスト)


<関連記事>
ラム「キャプテンモルガン」がトレジャーハントを支援——実在したヘンリー・モルガンの沈没船を調査(ブルームバーグ)

2012年11月11日日曜日

ディアジオ、ユナイテッドスピリッツ買収交渉が妥結――公開買付などで過半数の株式取得へ(スコッツマン)

酒造最大手のディアジオ(英)は9日、インドの酒造企業、ユナイテッドスピリッツ(ユナイテッド社)を買収すると発表した。
ユナイテッド社は、スコッチブレンデッド・ウイスキー「ホワイト&マッカイ」などのブランドを保有しており、インド国内で41%のシェアを持つ。
しかし、関連企業であるキングフィッシャー航空の財務不安などが表面化し、ディアジオへの売却交渉が進められていることが伝えられていた。

ディアジオはまず、6億6千万ポンド(約830億円)でユナイテッド社が保有する株27.4%を取得、その後、公開買付で53.4%の株式取得を目指す方針だ。
一方、ユナイテッド社のヴィジェイ・マリヤ会長は留任し、南アフリカでディアジオとトウモロコシビールの合弁企業を立ち上げるという。

インドの酒類産業は今後5年間で毎年15%の成長を続けるとの予測があり、ディアジオのポール・ウォルシュCEOは「世界で最も急速な成長をしている市場において、戦略を組み立てることで影響力を築ける。特筆すべきマイルストーンだ」とコメントした。

Whisky giant Diageo buys controlling stake in Whyte & Mackay owner United Spirits(スコッツマン)

2012年11月9日金曜日

グレイグースの倉庫、清掃の模様がFBで話題に――ハリケーン「サンディ」の被害、従業員・ボランティアが24時間体制で後片付け(nj.com)

清掃中に撮影された集合写真。
後ろには片付けられる前の状態の商品が
写っているが、下の写真のように清掃は
相当進んだ模様。
(クリックすると拡大)
米ニュージャージー州でウオトカ(ウォッカ)「グレイグース」などの代理店を務める販社、フェドウェイアソシエーツの倉庫がハリケーン「サンディ」の上陸により浸水した。
浸水直後の倉庫内は商品が散乱するといった状況にあったが、従業員と同社の顧客を主体としたボランティア、総勢250名が清掃を開始。
同社はその模様をフェイスブック(FB)にアップロードし、投稿に対して「いいね!」が100を超えるなど、話題を呼んでいる。


Sandy's latest victim: New Jersey's sole supplier of Grey Goose vodka, Cristal champagne(nj.com)

FBページ上での発表によると、先週のサンディ上陸によりハッケンサック川が氾濫、その水が同社のカーニー倉庫を襲った。
ただちに代替となる17,700平米の倉庫と100台のトラックを借り上げ、残存する商品を移動。
19日にも業務を再開する見込みだ。

そして、5日からは本来使用していた倉庫の清掃を、前述の従業員とボランティアが開始。
1日3交代、24時間体制で行なわれ、きょう11時52分(日本時間)には「短い時間で長い道のりを踏破した」というコメントとともに、清掃が進んだ倉庫内の写真(左)をFBにアップロードした。

なおニュージャージー州法では、酒の小売業者は州内の指定された卸売業者から商品を仕入れなければならず、州外から購買することを禁止している。
同社はグレイグースの代理店であるだけでなく、卸売業者として州内最大手。
営業再開の予定を立てるとともに、入荷量を拡大することで被害以前の在庫を可能な限り維持していく方針だ。
州政府は同様の規定があるガソリンについて規制緩和の検討を開始したが、酒類産業については「業界からそうした要請はなく、緩和しない(クリス・クリスティ州知事)」としている。


<関連記事>
アイラ島で群発地震(キャンベルタウンクーリエ)

2012年11月8日木曜日

プランゲCEO「次の目標はアフリカ市場」――ペルノリカール(グローブアンドメール)

仏酒造大手、ペルノリカールのピエール・プランゲCEO(写真)はアフリカ地域の販売拡大を目指すと言明した。
ロイターのインタビューにより、明らかになったもの。
同社はアジア市場の成長に減速の兆候があると見ており、アフリカ地域を「最後に残された足掛かり」としてシェア獲得に挑む。



Pernod bets on Africa as next growth frontier(グローブアンドメール)
http://www.theglobeandmail.com/report-on-business/international-business/african-and-mideast-business/pernod-bets-on-africa-as-next-growth-frontier/article4971447/

インタビューの中でプランゲCEOは「次の新市場はアフリカと見て間違いない。10年計画を立てサブサハラアフリカ(サハラ以南地域)の開拓を目標とする」と発言している。

現在の酒造業界は、ディアジオ(英)がマーケットリーダーであり、ペルノリカールはそれに次ぐ。
市場の成熟や金融危機から欧州地域での拡販は望みが薄く、新興国市場でのシェア獲得が急務。
現時点でも、両社ともに売上の約4割を新興国市場が占めている。
中国市場に限ってみれば、ペルノリカールはトップシェアの座にあるものの、10月25日の第1四半期決算でアジア市場と、そのキーとなる中国市場について「成長が鈍化」と評価しており、今回の発言は酒造業界の新展開を表すものとなりそうだ。

ペルノリカールは今年7月までにモロッコ、ナイジェリア、ガーナ、ナミビア、アンゴラ、ケニアに駐在員を派遣しており、既にスピリッツのプロモーション活動を開始している。
また、ディアジオも2010年にタンザニアのセレンゲティ(Serengeti)、今年初めにエチオピアのメタアボ(Meta Abo)と二つの現地ビール会社を買収した。
ただ、プランゲCEOは「ローカルブランドを買収しない。既存ブランドで十分拡大できている」と発言しており、当面は自社の営業力で拡販を目指す模様だ。


<関連記事>
「リーマンショック以来、最高の成長」――ペルノリカール決算発表(BBC)
パトリック・リカールさん死去――ペルノリカール元会長、67歳(BBC他)

2012年11月6日火曜日

スコットランド科学者に「イノベーター・オブ・ジ・イヤー」――蒸留所廃棄物からバイオ燃料への変換技術が評価(スピリッツビジネス)

化学研究者団体インスティテューション・オブ・ケミカルエンジニアズ(IChemE)は、次世代燃料開発企業、セルティックリニューエイブルス(英スコットランド)のマーティン・タングニー代表(写真)に「イノベーター・オブ・ジ・イヤー」賞を授与した。
IChemEは英、オーストラリアなどに拠点を持つ国際的な研究者団体で、例年、革新的な研究を行なった企業、研究機関などに様々な賞を授与している。

WHISKY FUEL SCIENTIST WINS PRESTIGIOUS AWARD(スピリッツビジネス)
http://www.thespiritsbusiness.com/2012/11/whisky-fuel-scientist-wins-prestigious-award/

セルティックリニューエイブルスは、スコッチ・ウイスキーを生産する際の廃棄物を、バイオブタノールに変換する技術を持つ。
ブタノールの成分、性質はガソリンに比較的近いと言われ、エタノールよりもガソリンエンジンへの悪影響が低いと考えられている。
エジンバラネイピア大学の教授でもあるタングニー代表が、これまで蒸留所で副産物とされていた澱や蒸留粕がブタノールの精製に適していることに着目し、同大学で研究を開始。
研究に一定の成果が出たことから、実用化を目指し同社を創設した。

同社の技術は酒造企業、学界に留まらず経済界からも評価を得ており、公営企業であるスコティッシュ・エンタープライズも研究開発を助成している。

「今回の受賞で、スコットランドの企業と科学者がイノベーション、中でも持続可能なエネルギー開発でリードしていることを証明した」とタングニー代表。
またIChemEのサンディー・トビー博士は、タングニー代表が受賞した理由を「100億ポンドが動く化学産業で企業家精神を見せ、ウイスキーに次ぐであろうスコットランドの輸出製品を見つけ出した。彼の開拓者としてのアプローチは賞を受けるに値する」と語った。

なお、IChemE2012アワーズのトッププライズ(大賞、最優秀賞)は、製薬大手のグラクソ・スミス・クラインが受賞した。


<関連記事>
車にモルトを飲ませよう——バイオ燃料としてのウイスキー(ザ・ジャーナル)
蒸留所の廃棄物で人道支援――アバディーン大研究者が浄水システムを開発(スコッツマン)