2012年6月29日金曜日

エリザベス女王、海軍にラムを下賜(プレスアソシエーション)

エリザベス2世英女王は自身のダイヤモンド・ジュビリー(即位60周年)を記念し、同国海軍にラムの樽を下賜した。

Rum jubilee deal for Royal Navy(プレスアソシエーション)

かつて支給品のひとつであったラムと英海軍とのつながりは深く、戦死したネルソン提督の遺体を防腐処理のため、ラム漬けにして本国まで運んだ、という伝説もある。
元記事を読む限り、現在の英海軍艦艇は禁酒、あるいは飲酒の制限がされているようだが、今回ばかりは将兵たちもラムの味を楽しんだ模様。

艦隊司令官代理兼海軍参謀本部長のフィル・ジョーンズ中将は「かつての伝統に則ってダイヤモンド・ジュビリーを祝えるのは名誉なことだ」とコメントした。

また同時に、海軍に協力する民間企業に対してダイヤモンド・ジュビリーの記念メダルも下賜されたという。


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2012年6月26日火曜日

【お知らせ】ちょっとお休みしております

いつもワールドスピリッツジャーナルをご覧いただき、ありがとうございます。

ここ数日、所用で更新をお休みしております。
場合によっては1週間くらい、休むかもしれません。

楽しみにしていただいている方には申し訳ございませんが、宜しくお願い申し上げます。

2012年6月23日土曜日

インドで「ウイスキー女子会」——ル・メリディアン役員が創設(ザ・パイオニア)

日本では女性だけの飲み会、すなわち女子会が流行しているが、この度インド・デリーでウイスキー女子会が発足した。
会の名は「ネロ」。
発起人はホテル、ル・メリディアン現地法人の副社長ミーナ・バーティアさんで、月に一度、同ホテルに会員たちが集まるという。

Entry by invitation only(ザ・パイオニア)

ネロが発足したのは昨年10月で、当初の会員は50名だった。
「最初は、その数を集めるのにも苦労した(バーティアさん)」
しかし会の存在が口コミで広がり、現在の会員数は180名に上る。

先に述べたとおり会員たちは月に一度、ル・メリディアンに集まる。
そこでは、ただテイスティングをするのではなく、読書、香水、あるいはチョコレートなどと、どのウイスキーが合うかのセッションを行なう。
バーティアさんは、こうした試みについて「女性がウイスキーを飲むことを怖がるのではなく、楽しむ空気をつくりたい」と話す。

「ウイスキーは長い間、男性によって支配されてきた。でも、ウイスキーの持つ豊かな歴史と文化は女性にも楽しい時間を提供する」
そして、バーティアさんはこう続ける。
「この会が、長い目で見て女性のためのクラブのプラットフォームになることを望んでいる」

2012年6月22日金曜日

蒸溜所でもクラウドファンディング——LDC、オンラインで資金調達を行なう(ハーパーズ)

4月24日の当サイトで、ロンドン・ディスティラリー・カンパニー(LDC)が蒸溜所を建設する、というニュースをお伝えした。
LDCはダレン・ルーク氏が創設したベンチャー企業で、ロンドンに蒸溜所がつくられるのはおよそ100年振りとなる。
このほど英酒類ニュースサイトのハーパーズが、同社の資金調達について報じている。

Envestors helps raise capital to produce London single malt(ハーパーズ)

LDCが資金調達に用いたのが、Envestorsというサイト。
オンライン上でビジネスを提案し出資者を募る、というもので、LDCは25万8千ポンド(約3200万円)の資金を集めることに成功した。
当サイトでは4月に「3月に出資募集が締め切られ」た、と報じたが、今回ハーパーズが報じている件と同一かは不明。
しかし、ハーパーズでは小売店、バーやスマートフォン向けサイトでの販売など、流通網の構築にまで踏み込んだ報道をしていることから、新たな投資家を獲得した可能性もある。

ルーク代表は「オンライン上の投資家たちは、成長の早いこのビジネスの初期段階において、答えを出してくれた」とコメントしている。

こうしたクラウドファンディングについては読者の方々には様々な意見があると思うが、同様の動きは今後、小規模の蒸溜所において続くものと思われる。
その中でどのような蒸溜所が生き残っていくか、注視したい。


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2012年6月21日木曜日

シアトルでつくられる焼酎「イーブンスター」(マーサーアイランドレポート)

米・シアトル郊外に、マーサーアイランドという島がある。
2009年、蒸溜所としてはシアトルで初めての酒造免許が、この島にある「ソドスピリッツ」という会社に下りた。
そして同社が主力商品として生産するのは、焼酎だという。

Shochu is sake distilled, not brewed(マーサーアイランドレポート)

同社はエイミー、K.C.のシーン夫妻によって運営される。
原料はワシントン州東部産の大麦を使い、発酵、蒸溜の工程を経た後、カリフォルニアワイン樽で熟成する。
また、西洋人の口に合うよう、ローズマリーやジンジャー、ミント、チリペッパーの風味づけもされるという。
「イーブンスター・プレミアム・カクテル・焼酎」と名付けられたこの焼酎は、今年7月に樽出し、初めてのテイスティングが行なわれる予定だ。

K.C.さんが日本に訪問した際、焼酎を知ったことが同社を創設するきっかけになった。
「焼酎が日本でポピュラーなアルコール飲料であることは聞いていた。それにもかかわらず長い間、あまり役立てられていなかったようだが、この10年の本格焼酎ブームでその状況も変わった」とエイミーさんは言う。
そして二人は、日本で焼酎のつくり方について学び、蒸溜所設立後は熟成の必要がないジン、ウオトカ(ウォッカ)をつくるかたわら、焼酎づくりに励んできた。

エイミーさんは「焼酎は低カロリーの飲み物。(イーブンスターを広めるために)小さなことでも出来ることをやっていく」と抱負を語る。


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2012年6月20日水曜日

廃水の再利用で、持続可能なラム生産——ラム「セラレス」(トリプルパンディット)

Don Q Añejo
セラレスの旗艦ブランド
「DonQ」
きのう、スコッチ・シングルモルトのトバモリー蒸溜所が、水不足により生産を縮小しているニュースを掲載したが、一方で、サスティナブル・プロダクション(持続可能な生産)の観点から水の再利用に力を入れている蒸溜所もある。
そのひとつが、ラムの「セラレス」(米プエルトリコ自治区)だ。

同社は廃水を投棄せず再処理することにより有機ガスを生成、このガスはボイラーに用いられ、これまで使用していた燃料の年間50%を賄っているという。

Making Rum Production More Sustainable(トリプルパンディット)

セラレスはカリブ地域最大規模のラム蒸溜所で、年間1500万プルーフガロン(度数50%のアルコールが約5700万リットル)の生産能力を持つ。
水の再処理システムを導入するのに、10年の歳月と1600万ドル(約13億円)のコストを費やした。

「これは究極のローカルプロダクション(現地生産)である。システムを導入した結果、資源利用を70%削減し、再処理した水も灌漑用水と同じグレードをもつものになった。最終的には99%の資源利用削減を目指す」とセラレス側はコメントしている。

また、セラレスだけでなくラム最大手のバカルディも、温室効果ガス、ならびに資源利用削減を今年のCSRレポートで宣言している。


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2012年6月19日火曜日

トバモリー、断続的な蒸溜停止に——降雨減少による水不足が原因

スコッチ・シングルモルト「トバモリー」は現在、断続的に蒸溜を停止している。
仕込水の供給を受ける湖の水位が、降雨量の減少により低下しているためだ。

Distillery: We haven’t had enough rain to make whisky(スコティッシュ・サン)
http://www.thescottishsun.co.uk/scotsol/homepage/news/4380963/Distillery-We-havent-had-enough-rain-to-make-whisky.html#ixzz1yDsiHoPM

同蒸溜所のイアン・マクミラン マスターブレンダーは「品質維持のための一段階として、何度かの蒸溜停止を行なった。降雨により必要な水量が得られるまで、この措置を執ることが決定されている。しかし、こうした状況が長期化することは予想しておらず、在庫もまだ十分にある」と現状を説明した。

元記事での明記はないが、トバモリーの仕込水はミニッシュ湖、ならびにその近隣の湖から流れ出る川より採取されている。
また、BBCの天気予報によれば、トバモリーの立地するマル島の天気は21日〜23日にかけて雨になると予想されている。


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2012年6月18日月曜日

ディアジオがベトナム大手販社への出資比率引き上げ(シェアキャスト)

酒類コングロマリットのディアジオ(英)は、ハノイリカーズ(ハリコ、ベトナム)への出資比率を45.5%まで引き上げた。
ハリコはベトナム最大の酒類販社。
今回の投資に要した費用は、1400万ポンド(約17億円)に上るという。

同社関係筋は、「今後も戦略的パートナーとして、イノベーション、ブランディング、流通など多角的にハリコをサポートしていく」とコメントした。

今後も、ディアジオ、ペルノリカール(仏)など、酒造大手による新興国企業の買収が続くものと見られる。

Diageo ups Vietnam vodka stake(シェアキャスト)


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2012年6月16日土曜日

米国で「チョコレートケーキ」、「ホイップ」味のウオトカがリリース(WSJオリジナル記事)

米国でスピリッツの製造・輸入販売を手掛けるフィリップス・ディスティリング・カンパニーは、自社のフレーバード・ウオトカ(ウォッカ)・ブランド「UVウオトカ」のポートフォリオに、「チョコレートケーキ」と「ホイップト」を新たに加えた。
「チョコレートケーキ」はドイツのチョコレートケーキを、「ホイップト」はクリームシャンティとバニラの風味づけがなされている。
また「ホイップト」は、今年開催されたWSWA(米国ワイン&スピリッツ卸売業者組合)の展示会で、フレーバード・ウオトカとしては唯一のゴールドメダルを獲得した。

UVウオトカはエスプレッソ、ココナッツ、アップル、シトラスなど、今回リリースされたものを含めて16種類のラインナップを提供する。
どのフレーバーも750ミリリットルボトルで、価格は12.99USドル(約1,000円)。

プレスリリース


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2012年6月14日木曜日

ディアジオがフレーバード・ウイスキー・ブランドを買収(コンシューマーグッズテクノロジー)

酒類コングロマリットのディアジオ(英)は、フレーバード・ウイスキー・ブランドの「キャビンフィーバー」(米、写真)を買収した。

Diageo Acquires Cabin Fever Maple Flavored Whisky(コンシューマーグッズテクノロジー)
http://consumergoods.edgl.com/news/Diageo-Acquires-Cabin-Fever-Maple-Flavored-Whisky80641

キャビンフィーバーはこれまでロビラード家によって所有されており、メープル・フレーバード・ウイスキーを生産している。
筆者を含め日本人にとって馴染みのないブランドだが、主に米国北東部で人気が高く、また米国内全体でフレーバード・ウイスキーの需要が高まっていることから、買収に踏み切ったようだ。

ディアジオのスティーブ・ラスト氏は、「ロビラード家によってつくられた、このユニークなウイスキーが成長を続けることを、楽しみにしている。当社はこのブランド、そしてロビラード家と継続的に関係を築いていく」とコメントした。


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2012年6月13日水曜日

レミーコアントローが決算発表——好業績から特別配当も(ロイター)

仏酒類メーカーのレミーコアントローは、2012年3月期決算の営業利益が2億ユーロ(約200億円)を超えたことを発表した。
前年比20.2%増の成績であり、市場アナリストらによる15〜18%増という事前予想を上回った。
同社は、1株あたり1.3ユーロという通常配当のほか、同1ユーロの特別配当も実施する。

UPDATE 2-Remy lifts spirits with special dividend(ロイター)

ヨーロッパの金融不安が続く中、同社の売上に貢献したのは、やはりアジア地域だ。
地域別売上比率では西ヨーロッパが20%に留まったのに対し、アジア・太平洋では38%を占める。
また、今年4〜5月の業績もアジア地域では伸びを示しているという。

ジャン・マリー・ラボルドCEOは、「アジア・アメリカ地域に景気減退の兆候は見られず、この地域でビジネスが成り立つ見込みを信じている。一方、ヨーロッパでの金融危機の不確かな状況は、警戒しなければならない」とコメントした。

同社はコニャック「レミーマルタン」やリキュール「コアントロー」を生産するメーカー。
今期決算ではコニャック部門が伸びを見せ、営業利益ベースで前年比21.6%の成長を記録した。
アジア地域・米国のほか、ロシアでのトラベルリテールも好調だという。
一方、既に売却しているシャンパン部門は、1億8860万ユーロ(約188億円)の赤字だった。


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2012年6月10日日曜日

中国の知的財産権問題はウイスキーにも——シーバスが商標権訴訟で敗訴(スコッツマン)

中国企業・個人による知的財産権の侵害が世界的に問題となっているが、酒類産業も例外ではないようだ。
酒造大手シーバスブラザーズ(シーバス、英)は、自社のブレンデッド・ウイスキー「シーバスリーガル」(写真)のロゴを衣料品に使用していた中国人の男性に対し、使用差し止めを求める裁判を行なっていた。
しかし北京中級人民法院は3月、シーバスを訴えを退ける判決を下した。

Whisky giant Chivas Regal in China battle to save name(スコッツマン)

判決の理由として、男性は衣料品にロゴを使用していることから酒造企業であるシーバスの権利を侵害しているとは認め難い点、また男性が商標を当局に申請した時期にはウイスキーのシーバスリーガルが中国国内で広く認知されていたとは認め難い点を挙げている。

判決に対しシーバスは、今後も法廷闘争を続ける声明を発表した。
同社の広報担当者は「当社の商標は2009年、中国当局にも認可されている。スピリッツに限らず、いかなる商品においてもシーバスのロゴが(勝手に)使用されるということは、中国国内に混乱を招く。今後も商標の保護を求め続けていく」とコメントしている。

(あす11日は更新を停止します)


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ハバナクラブ、米国ではバカルディに商標権——最高裁判決(ウォールストリートジャーナル)

2012年6月9日土曜日

英誌・調査会社が共同で酒類ブランドランキングを発表(アドエイジ)

酒類業界誌「ドリンクスインターナショナル」(英)と市場調査会社ユーロモニターインターナショナル(同)は4日、酒類ブランドをランキング化したレポートを発表した。

Global Booze Trends: Winners, Losers and How Elections Spurred Rum Brand in Philippines(アドエイジ)
http://adage.com/article/global-news/global-booze-trends/235279/

ランキングは、協力を得るメーカーからの回答に基づく出荷ケース数(1ケース=9リットル)で決められる。
2011年度の調査(今回)は180のブランドから回答があり、そのうち60のブランドは100万ケースを超える出荷数量だったという。

首位となったのは韓国のソジュ(焼酎)「眞露」。
同ランキングでは「グローバルブランド」と「ローカルブランド」という2種類のステータスで区分しているが、眞露はこのうちローカルブランドに位置付けられ、またトップ20ブランドのうち13はローカルブランドだ。
これらの理由として、アジアのスピリッツ消費量が世界市場の半分を占めること、また——プレミアムブランドが台頭していると言われる中であっても——消費の中心となるのは低価格、品質を抑えた商品であることが挙げられる。

また、グローバルブランドとしてトップとなったウオトカ(ウォッカ)「スミノフ」は対前年比1.2%の出荷増となった(全体のランキングでは2位)。
しかし、レポートでは「英国、米国などキーとなるマーケットは既に成熟しており、伸びを補うためにはブラジルなどの新興国市場が重要だが、その中で1%の成長に留まったのは残念」としている。


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スキニーガールの成長率は388.3パーセント——米調査会社がスピリッツ・トップ250ブランドを発表(マーケティング・デイリー)

2012年6月8日金曜日

米サンディエゴ、ポートランドで日本酒関連のイベントが開催(レストランニュースリリース他)

米カリフォルニア州サンディエゴのレストラン、カフェ・ジャペンゴで日本酒のテイスティングイベントが開催されている。
6月は既に7日に行なわれているが、次回は7月12日に開催予定。

Japan’s Storied Sake Takes Center Bar at Cafe Japengo’s New Monthly Tasting Series(レストランニュースリリース)

カフェ・ジャペンゴは寿司を中心としたアジアの多国籍料理を提供するレストラン。
所属する寿司職人のジェリー・ワーナー氏が2005年のカリフォルニア・スシ・コンペティションで「マスター・スシ・シェフ」の称号を得るなど、数々の受賞歴がある。
6・7月に開催されるテイスティングイベントは、「特別本醸造 市島」(市島酒造、新潟)、「雪の茅舎 純米吟醸」(齋彌酒造店、秋田)など、5種類の日本酒が味わえる。
また、酒類マーケティング会社のヤングス・マーケット・カンパニー社員で日本人の母を持つクリス・エリオット氏が、日本酒の歴史や味わい方などについてレクチャーする。
参加費は25ドル(約2,000円)。

またオレゴン州ポートランドのジュピターホテルでは11月16日に、「IZAKAYA」と銘打ったイベントを開催する。
こちらは、酒、ビール、日本食を提供し、日本の居酒屋の雰囲気を味わうことを目的としたもののようだ。

Premiere Portland Japanese Culture Festival Revealed(シアトルpi)


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2012年6月7日木曜日

ディアジオ、新蒸溜所建設を検討——5年間で1,200億円の投資計画(BBC)

酒類コングロマリットのディアジオ(英)は6日、今後5年間で総額10億ポンド(約1,230億円)を投資する事業拡大計画を発表した。
スコッチ・ウイスキーのための新倉庫が建設される予定で、スペイサイド、もしくは、ハイランドに新蒸溜所を設けることも検討されている。

Scotch whisky firm, Diageo, to invest £1bn(BBC)

同社の財務報告によれば、スコッチ・ウイスキーの売上が5年前と比較し50%増加しており、今期決算予想も30億ポンド(約3,690億円、スコッチ・ウイスキーのセグメントのみ)の売上が見込まれている。
計画について同社のポール・ウォルシュCEOは次のようにコメントしている。
「今後も成長が続いていくと予想している。これまで続けてきた投資は、すでに我々の資産として成熟しており、今回の新たな投資はそれらを基礎とする。また、スコッチ・ウイスキーは英国における重要な輸出産業となっており、国内投資を刺激し雇用を創出する役割も、もっている」

実際、今回の計画でも雇用拡大が盛り込まれており、スコットランド・連合王国両政府は歓迎の意を示している。
ジョン・スウィニー スコットランド政府財務大臣は「ディアジオの計画は、わが国の飲食料品戦略で中心的役割を果たすものであり、スコットランド政府としてこれを評価する」と述べた。
またマイケル・ムーア スコットランド庁長官(連合王国政府)は「スコッチ・ウイスキーの需要が世界的に高まっているのは、その品質と専門的技術が新たな市場に受け入れられたからだ。今回の投資は、スコットランド経済、そして雇用に大きな貢献を果たすであろう」との見方を示した。

なお、競合するペルノリカール傘下のシーバスブラザーズ(シーバス、英)は先月30日、年間4,000万ポンド(約48億円)の投資計画を発表している。
シーバスのクリスチャン・ポルタCEOは、今年2月に新蒸溜所建設を示唆する発言をしていたが、当面は休止中のものも含めた現存蒸溜所のキャパシティー拡大で、スコッチ・ウイスキーの需要増に対応していく方針となった。


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ラム「キャプテンモルガン」がトレジャーハントを支援——実在したヘンリー・モルガンの沈没船を調査(ブルームバーグ)

自ら海底を調査する、ハンゼルマン教授
(テキサス州立大学ホームページより)
テキサス州立大学の海洋考古学者、フレデリック・”フリッツ”・ハンゼルマン教授は来月、パナマ沖の沈没船を調査する。
この船は17世紀に活動した海賊、ヘンリー・モルガンが指揮した船と考えられている。
そして、調査を資金的に支援するのは、同じくヘンリー・モルガンにあやかって名付けられたラム「キャプテンモルガン」だ。

Captain Morgan’s Search for the Real Morgan's Brand Treasure(ブルームバーグ)

1年前に行なわれた予備調査では、7メートル×16メートルほどの船の一部を発見。
そこには箱や棚もあったという。
またハンゼルマン教授は最近、周囲の海底からモルガン艦隊が使用したと思われるキャノン砲も発見しており、この船はモルガン艦隊の旗艦「サティスファクション」ではないかと期待している。

キャプテンモルガンのブランドを現在保有するのはディアジオ(英)。
同社のトム・ハーブスト ブランド・ディレクター(米国・キャプテンモルガン担当)は「この物語はキャプテンモルガンのブランドに磨きをかける。そして、我々は宝探しをするのだ」と海底に秘められたロマンに思いを馳せる。

なお、調査する海域はパナマ領海であるため、宝石などが発見されても所有権はパナマ政府にある。
もしそれが現実となった場合、パナマの歴史遺産保護を目的とするNGOが管理する予定だという。


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2012年6月6日水曜日

グランツ社ステラ・デイビッドCEOインタビュー②(アイリッシュタイムズ)

きのうからのつづき)

ワールドスピリッツジャーナルの記事を書いていて日々思うのが、世界の酒造各社のリーダーたちは、ユニークな経歴を持っている者が多いということだ。
たとえば、ビーム(米)のマシュー・シャトックCEOはダラム大学(英)で学んだ後、英国陸軍戦車部隊の指揮官をしていた。
また、キリンビールの磯崎功典社長は(同社グループ企業ではあるが)ホテルの支配人を務めた経験を持つ。

その点、ステラ・デイビッド グランツ社CEOの経歴も興味深い。
彼女はイングランド・ノースヨークシャー州に生まれ、ケンブリッジ大学で工学を修める。
航空機メーカー、ブリティッシュ・エアロスペース(BAe、英)の支援の下で、だ。
やはり大学では「飛行機の設計をしていた」というが、しかし、卒業後に入社したのはBAeではなく音楽事業を展開するソーンEMI(英)だった。
ここで彼女は、マーケターとしての人生をスタートさせる。
「エンジニアになるよりマーケターとなって、良かったと思っている」
ソーンEMIだけでなく、「スナックフーズの会社」、そしてバカルディ(英領バミューダ諸島)で、いずれもマーケティングに携わる。
なかでもバカルディには15年、在籍した。
「バカルディでのキャリアは、英国担当のマーケティング・コントローラーという立場からスタートした。その後、マーケティング・ディレクター、取締役(英国担当マネージング・ディレクター)、会社の最高マーケティング責任者になった」
バカルディでの思い出は、プレミックスカクテル「バカルディ・ブリーザー」の、英国での成功だという。
「バカルディ・ブリーザーは然るべきときに、然るべくしてつくられた商品だった。英国で爆発的に売れたのは、見た目もそうだけれど味も良い商品だったからだ」
デイビッドCEOがそう言うと、インタビュアーのキャラハン・ハンコック記者はいじわるな質問をした。
「今でも、バカルディ製品を飲むのですか?」と。
しかし、デイビッドCEOは今の会社への思いを言葉に表す。
「正直に話したところで、私が好きなのはヘンドリクス。私はあなたが注目しているブランドに忠実なの」

彼女は2009年8月、そのヘンドリクス・ジンを保有する、グランツ社の門をくぐる。
バカルディでの実績を評価され、CEOとして迎え入れられたのだ。
「グランツ社は身の丈を知っている会社。小さい会社ではないけれど、大きくもない。大切なのは、自分の強さが何であるかを知っているか、ということ」
グランツ社は今年で創立125周年を迎える。
だが、社内向けのものを除いて特にイベントなどを行なわない。
また会社はウィリアム・グラントの子孫たちによって保有されるが、創業家のメンバーはオペレーションを行なう立場にはないという。

ハンコック記者は彼女を「種々の可能性については、慎重に話す」と評する。
タラモアデュー(元記事はアイルランド紙)の今後について、「つまるところ、どのくらい大きなブランドになるかなんて話すことができない。それをするのは愚かなこと。でも、今日よりは確実に大きくなっているだろう」と語った後、こう付け加えた。
「大切なのは、(タラモアデューの)名前で選んでもらうこと、棚から商品を手に取ってもらうこと——消費者との間にその関係を築いていくことだ」

Whiskey galore for Tullamore(アイリッシュタイムズ)


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グランツ社ステラ・デイビッドCEOインタビュー①(アイリッシュタイムズ)
グランツ社、トップが交代(ヘラルド・スコットランド)

2012年6月5日火曜日

グランツ社ステラ・デイビッドCEOインタビュー①(アイリッシュタイムズ)

「カレンダーの数字が赤い日は、家でダーツをしている。下手糞だけど」
ときにはソファに寝そべって、スライスしたキュウリを片手に「ヘンドリクス・ジン」を飲む。
このときも、テレビでダーツの試合を観るという。
「ヘンドリクスとスライスしたキュウリは本当によく合う」
日本人的な感覚からすればお洒落に感じるかもしれないが、元記事の見出しにあるように、生活観はヨーロッパの労働者階級のそれに近い。
しかし彼女は、英国酒造大手のCEOだ。

アイルランド紙、アイリッシュタイムズが行なったウィリアム・グラント&サンズ(グランツ社)、ステラ・デイビッドCEOのインタビュー記事を2回に分けて掲載する。

Whiskey galore for Tullamore(アイリッシュタイムズ)

日本はもちろん、アイルランドにおいても彼女の名は知られていない。
しかし、彼女はアイルランド・オファリー州に3,500万ユーロ(約34億円)投資することを決定した人物だ。

2010年にアイルランドのC&Cグループから、アイリッシュ・ウイスキー「タラモアデュー」を1億7,100万ユーロ(*)で買収したことを振り返り、デイビッドCEOは「とてもいい値段だった」と振り返る。
しかし、タラモアデューはオファリー州タラモアに由来する名でありながら、今はミドルトン蒸溜所でつくられている。
正確にいえば1954年まではタラモアで生産されていたが、アイリッシュ・ウイスキー・メーカーの大合併で、以後、ミドルトンなど他のブランドと一緒につくられるようになった。
また、ミドルトン蒸溜所を保有するのはディアジオに次ぐ大手ペルノリカール(仏)。
タラモアデューはペルノリカールと契約を結んだ上で、生産されている。
「私たちはタラモアデューが未来に亘って成功するために、投資している。5〜6年といった短期のブランド保有を考えているわけではない」

かくして、彼女はオファリー州に新たな蒸溜所をつくることを決断した。
58エーカー(約2万3500平米)の土地を取得し、生産設備のほか、ビジターセンターを設ける。
地元への雇用創出だけでなく、観光資源としての活用も期待できる。

現在、ヨーロッパは金融不安の渦中にあり、なかでもアイルランドはスペインなどとともに、日本においても危機が報じられる。
しかし、グランツ社の取締役会において「心配する声はなかった」とデイビッドCEOは言う。
というのも、タラモアデューは2011年度に70万ケースを出荷しており、これは前年比で15%増という数字だ。
なかでも米国での売上は芳しく、8万ケースが米国向け出荷、またアイリッシュ・ウイスキー全体で見ても170万ケースを米国に出荷しており、こちらは前年比24%増となっている。
今回の投資は、成長が見込める自然な流れの中でのものだ。

なお、デイビッドCEOは「ジェイムソン(ペルノリカールが保有するアイリッシュ・ウイスキー・ブランド)はインターナショナルで、コスモポリタンな印象を受ける。一方で、タラモアデューはアイルランドの歴史的アイコンといった感じ」と比較する。
そして、こうも付け加える。
「アイリッシュ・ウイスキーはスコッチ・ウイスキーと比べると、小さく見えるかもしれない。だけど、それは正しくない。グローバル市場でアイリッシュ・ウイスキーは過小評価されている。可能性があるカテゴリーなのに、それに比べると評価は本当に小さい」

(あすへつづく)


(*)元記事による。本サイト3月29日掲載の記事では同ブランドの買収額を「2億5千万ポンド」としたが、こちらもBBCの元記事が根拠。この2つの数字に整合性が取れないことにつきご容赦いただきたい。
なお、1億7100万ユーロを当時のレートで換算すると19億円〜20億5千万円程度となるため、これも以前の記事との整合性がない。


<関連記事>
タラモア・デュー、故郷に帰る——グランツ社がオファリー州に新蒸留所建設(BBC)

2012年6月4日月曜日

ブレンデッド・ウイスキー「アイル・オブ・スカイ」がリニューアル(リテールタイムズ)

グレンゴイン蒸溜所などを保有する独立系蒸溜所グループでボトラーのイアン・マクロード・ディスティラーズ(英)は、ブレンデッド・ウイスキー「アイル・オブ・スカイ」をリニューアルすると発表した。

Ian Macleod Distillers unveils new design for Skye Blended Scotch Whisky range(リテールタイムズ)

ラベルには、キュイリン山と沈む夕陽の情景を描き、「霧の島」として知られるスカイ島の豊かな自然を投影する。
また、アイランドモルトとスペイサイドモルトをブレンドするという創業者・故イアン・マクロード氏のレシピに基づいている、ということからウイスキーそのものは既存商品を踏襲しているものと見られる。

同社のレイン・ウィアー マーケティング担当取締役は、以下のようにコメントしている。
「新しいブランドデザインをするにあたり、スカイ島が持つ『価値』——島が有する歴史や遺産を表現したかった。キュイリン山と夕暮れの情景はリラックスかつ満足させてくれるものだ。忙しい一日の終わり、あるいは、仕事に成功して杯を掲げているときなどに、アイル・オブ・スカイでそうした満足感、達成感を味わっていただければ、と思う」

今回、リニューアルが発表されたのは「8年」と「12年」。
このうち8年は1.5リットル、700ミリリットルボトルと、ハーフボトル(350ミリリットル)、ミニチュアボトル(50ミリリットル)が販売される。
なお、リンクしている元記事に新デザインのボトルが掲載されている。


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2012年6月3日日曜日

ペンダーリンが「グランドスラム2012エディション」リリース——ラグビーのウェールズ代表を讃える記念ボトル(ニュースウェールズ)

Penderyn Grand Slam 2012ウェルシュ・ウイスキー「ペンダーリン」は、「グランドスラム2012エディション」(写真)をリリースした。
今年2〜3月に開催されたラグビーのシックスネイションズ大会で、ウェールズ代表が全勝優勝したことを記念するもの。
同大会の全勝優勝を「グランドスラム」と言う。

Special Welsh whisky to toast Grand Slam(ニュースウェールズ)

ウェールズ代表によるグランドスラムは今年だけでなく2005年、2008年と、この7年間で3回達成されている。
ペンダーリンを生産するウェルシュウイスキーカンパニーのステファン・デイビス取締役は、この偉業と同商品リリースに「チームは素晴らしい仕事を行ない、我々はこれをウイスキーに反映させた」とコメントしている。
また代表チームのアダム・ジョーンズ選手は「グランドスラムを記念するボトルがリリースされ、素晴らしいことだと感じている。ペンダーリンのグランドスラムエディションは私の家の炉棚にも並ぶことだろう」と喜びを語った。

ボトルを収める箱には、ウォーレン・ガットランド監督を筆頭に選手たちのサインや大会の順位表、そしてグランドスラムを達成した対フランス戦の日付がプリントされる。
マデイラウッドフィニッシュで、アルコール46パーセント。
価格は42.99ポンド(約5,200円)。


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2012年6月2日土曜日

英国のホテルに「最も多くのジンを飲める場所」のギネス記録認定(BBC)

フェザーズホテルのバーカウンター
イングランド・オックスフォードシャー州ウッドストックに立地するフェザーズホテルに1日、ギネス・ワールド・レコーズの証明書が授与された。
同ホテルが「最も多くのジンを飲める場所」の世界記録を達成したからだ。

Feathers Hotel has Guinness World Record gin collection(BBC)

同日にギネス認定員立会いの下、ホテル内にストックされている異なる161種類のジンをカウントした。
数え終えるまでに費やした時間は45分。
また、立会った認定員が同ホテルのジェレミー・デュプレシス ゼネラル・マネージャー(GM)に説明したところによると、この数字は前の記録保持者の3倍になるという。

「世界中からジンを集めており、我々の努力が報いられた(デュプレシスGM)」という言葉通り、ジンは英国やオランダのものだけでなく、スペイン、日本、米国、ポーランドなどのブランドも置いている。
またヴィンテージボトルもあり、200ポンド(約2万4千円)の価値を有するものもあるという。

デュプレシスGMは「本当にうれしい。ホテルとチームにとって最高のときだ」とコメントした。


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2012年6月1日金曜日

シーバス、4蒸溜所のキャパシティー拡大を発表——投資額48億円(スコッツマン)

仏酒類大手ペルノリカールと傘下のシーバス・ブラザーズ(シーバス、英)は5月30日、スコッチ・ウイスキーの蒸溜所に年間4,000万ポンド(約48億円)を投資する計画を発表した。
中国を中心とした新興国の需要増に対応するため。

£40m splashed out on raising Pernod whisky production(スコッツマン)

すでに同グループのグレンキース蒸溜所(2000年に操業停止)が来年春の再オープンを目処に工事が進められているが、今回の投資により、グレンアラヒー、グレントファース、ロングモーン、そしてトーモアという、4つの蒸溜所の生産能力を拡大する。
また今夏には、グラスゴー近郊のペイズリーに「プレミアム」ウイスキー専用のボトリング施設もオープンするという。

シーバスのクリスチャン・ポルタ会長兼CEOは「毎年4,000万ポンド規模の投資を行なっていくことを宣言する。今回の投資は力強い成長を続ける市場に対応するためのものだ。当社の将来に亘る成長の基礎を固めるため、イノベーションとポートフォリオの拡充を継続して行なっていくことを約束する」とコメントした。


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