2013年6月22日土曜日

英政府系機関・メーカーなど、ジュニパー減少に危機感――ジンの原料(スピリッツビジネス)

 本サイトで2月14日、ベリーブラザーズ&ラッド(英)のジン・ブランド「No.3」がジンの原料であるジュニパーの保護支援を始めたことを伝えた。ジュニパーの疫病菌(Phytophthora austrocedrae)感染は、欧米で深刻に受け止められている模様で、今週半ば頃から複数のメディアが取り上げ始め、21日には放送局ABC(米)、BBC(英)も関連記事等をオフィシャルサイトに掲載した。

JUNIPER DISEASE THREATENS GIN PRODUCTION(スピリッツビジネス)
http://www.thespiritsbusiness.com/2013/06/juniper-disease-threatens-gin-production/

 ジュニパーは和名でセイヨウネズといい、北緯30度より高緯度に生息する低木。実であるジュニパーベリーが、ジンの原料として利用される。ジンの生産が盛んな英国に自生していたものは、この数十年で7割減少したといい、環境保護団体プラントライフのティム・ウィルキンズ種族回復コーディネーターによると「イングランドのローランド地方では今後50年で、絶滅の危機に瀕する」という。

 ジュニパーベリーを多用する高級・愛好家向けのジン生産にも、既に影響を与え始めている。ブルイックラディ蒸留所が生産するジン「ボタニスト」は、30種の原料のうち20種以上を蒸留所が立地するアイラ島産のものを採用することが売りだ。しかし、同蒸留所のカール・レヴィー氏はメール紙の取材に「アイラ島にはごく少数のジュニパーしか残っていない。我々が使用するものは、ほとんどがイタリア産だ」と実情を明かす。

 ジュニパー保存へ向け、英環境・食糧・農漁村地域省は減少状況の調査を行なうと発表。前述のプラントライフも、英国森林委員会、スコティッシュナショナルヘリテージ(スコットランド政府機関)とともに、住民の協力とインターネットを活用したジュニパー自生状況の観測を開始する。

 状況が悪化すれば、英国だけでなくヨーロッパ大陸にも疫病菌が広がることも懸念されている。ジンを未来に亘って楽しむためには、政府や企業などの民間団体、そしてドリンカーを含めた市民たちの協力が必要になりそうだ。


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2013年6月21日金曜日

中国、メキシコからのテキーラ輸入を緩和へ――貿易不均衡の解消図る(NWI他)

MEXICO-CHINA-JOINT STATEMENT
メキシコで行なわれた首脳会談での習・
中国国家主席とペニャ・ニエト・メキシ
コ大統領
 中国当局は19日、現状で規制下においているテキーラの輸入を緩和する方針を示した。これを受け、訪中していたエンリケ・マルティネス・メキシコ農務長官は「我々が成功へ向け進むと確信している」とコメントし、米国向けと比較して0.2%程度に留まっている中国向けテキーラ輸出を拡大することに、自信を見せた。

Mexico tequila market in China: drunk with promise(NWI)
Mexican food exports to China to reach 1 bln USD: minister(中華網・英語版)
http://www.china.org.cn/world/Off_the_Wire/2013-06/19/content_29168030.htm


 今回の決定は、今月初めに米州諸国を歴訪した習近平中国国家主席と、エンリケ・ペニャ・ニエト・メキシコ大統領との間で合意に至った、経済連携強化の方針によるもの。現在、両国間の貿易は、中国からメキシコへの物流が10に対して、メキシコから中国へは1と、不均衡状態になっている(ソース=NWIの記事)。中国にとっては現状を変革させることでメキシコ側から不満が起こることを避け、あるいは対中不信を解消する狙いがあるものと見られる。テキーラの他、豚肉やフルーツなどのメキシコ産食品を輸出し、メキシコ政府としては今後1年〜1年半で最低でも10億ドル(約970億円)まで対中輸出額を拡大したい考えだ。

 現在、テキーラの最大輸出先は米国で、1億6570万リットルと輸出量全体の8割を占める。一方、中国向けは41万250リットルに留まっており、新正月の贈答品、高級嗜好品として既に中国国内で一定の人気を得ているスコッチ・ウイスキーやコニャックに遅れをとった格好となっている。「我々は現地で人を雇用し、関税や食文化などの調査を行なう。その上で、どのように飲んでもらえれば良いのかを検討する(テキーラ・ブランド『パトロン』デーヴィッド・ロドリゲス・プロダクションディレクター)」と、生産者側も本腰を入れる構えだ。

 ただ、中国政府・共産党は国内経済について、輸出と海外からの投資に依存したこれまでの状況から、内需拡大による自立した経済体制への転換を目論む。米市場調査企業フロスト&サリバンのクリストファー・シャナハン氏は以下のコメントを、AP通信に寄せている。
「メキシコのテキーラ生産者は、中国への参入当初には物珍しさから一定の需要を得ることだろう。しかし、(長期的に見ると)国内生産を海外の競争から保護しようとする中国の政策とぶつかることがあるかもしれない」

 メキシコは昨年、政権交代が行なわれており、前政権でもテキーラの貿易について中国政府と合意に至りつつあったが、フェリペ・カルデロン前大統領が親チベット的姿勢を見せたため、破談となった経緯がある。


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2013年6月19日水曜日

世界で最もジンを飲むのはフィリピン人――IWSRがスピリッツ消費動向を発表(ラプラー)

 酒類業界の市場調査を行なう企業、インターナショナル・ワイン&スピリッツ・リサーチ(IWSR、英)は、世界のスピリッツ消費動向を発表した。スピリッツ各種の消費量も公表されているが、意外にも、ジンの一人当たり消費量が最も多い国はフィリピンだという。

Filipinos are world's biggest gin drinkers(ラプラー)
http://www.rappler.com/business/industries/176-food-and-beverage/31582-filipinos-are-biggest-gin-drinkers

 発表によると、フィリピンのジン一人当たり年間消費量は1.4リットル。ジンと縁の深いオランダ、英国はそれぞれ0.8リットル、0.4リットルで、フィリピンに次ぐ消費量を誇るスロバキアは1.2リットルだった。

 ただ、フィリピンで消費されるのは「ビーフィーター」や「タンカレー」などといったグローバル・ブランドではなく、ローカル・ブランドが多いという。たとえば、1834年に販売開始という歴史を持つ同国のジン「ジュネルヴァサンミゲル」は昨年、2380万ケースを出荷した。元記事には明記されていないが一般的な1ケース=9リットルで換算すると、2億1420万リットルを出荷したことになる。今回、IWSRは世界全体のジン消費量が4億4000万リットルと発表しており、出荷量と消費量の違いを考慮する必要があるとはいえ、世界シェアの半分近くをジュネルヴァサンミゲルによって占められていると考えることもできる。

 またフィリピンは、ラムの一人当たり消費量も1.4リットルで、世界3位となっている。首位のキューバが4.9リットル、2位のドミニカ共和国が3.3リットルと中米国が突出して高く、一方で4位以下は全て年間1リットル未満の消費量だった。

 なお、スピリッツ全体の世界年間消費量は74億4000万リットルで、このうち44億4000万リットルをウオトカ(ウォッカ)が占める。さらに、その半数近い約20億リットルがロシアにおいて消費されているという。


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2013年6月18日火曜日

バーボン「エヴァンウィリアムズ」、ボトルデザインを変更へ(スピリッツビジネス)

 米酒造ヘヴンヒルディスティラリーズは12日、バーボン・ウイスキー「エヴァンウィリアムズ・ブラックラベル」などのボトルデザインを変更すると発表した。大きな変更点として、これまでネック部に「サワーマッシュ」と書かれたシールが貼られていたが、今後は創業者エヴァン・ウィリアムズのサインをエンボス加工したデザイン(写真)となる。詳細な変更時期については明らかにされていない。

 同社のスーザン・ワール・シニアブランドマネージャーによると「(ブラックラベルは)750ミリリットル、1リットル、1.75リットルの各ボトルを変更する」といい、ほかに「ボトルインボンド(ホワイトラベル)」などもデザイン変更の対象となる。一方、高価格帯商品である「シングルバレルヴィンテージ」、「1783スモールバッジバーボン」は現行のデザインを継続する。

 なお同ブランドは今秋、旅行者向け施設である「エヴァンウィリアムズ・バーボン・エクスペリエンス」をオープンする予定。

EVAN WILLIAMS BOURBON REFRESHES PACKAGING(スピリッツビジネス)


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2013年6月17日月曜日

スコットランド・パース郊外にストラサーン蒸留所オープン(クーリエ)

 英スコットランドにまたも新たな蒸留所が誕生する。名をストラサーン蒸留所といい、パース市郊外のバチルトン農場につくられるもの。モルト・ウイスキー、ジンを蒸留し、将来的にはエールの醸造も検討する。来月中旬の正式稼働を目指す。

New Perthshire whisky distillery to show plenty of spirit(クーリエ)
http://www.thecourier.co.uk/news/local/perth-kinross/new-perthshire-whisky-distillery-to-show-plenty-of-spirit-1.102434

 創業したのはトニー・リーマン−クラーク氏、デーヴィッド・ラング氏、デーヴィッド・ワイト氏の三名。元記事によるとスコットランドで最小規模の蒸留所となるが、ウイスキーづくりを体験できるワークショップ開講が蒸留所の目玉だ。ワークショップはおよそ一週間をかけるもので、原材料である大麦をバチルトン農場から摘み、発酵、蒸留、そして樽詰めまでを行なう。

 今のところ同国内の個人経営小売店を中心に商品を流通させる意向だが、樽の販売も行なう模様。ワークショップ受講、樽購入の問い合わせは蒸留所のメールアドレス、TEL (国際電話会社番号+)010-44-1738-840100まで。


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