2014年4月15日火曜日

アバディーンの研究所、科学捜査を応用した大麦開発へ――ウイスキー需要拡大による原料不足を背景に(スピリッツビジネス)

 スコッチ・ウイスキーの需要拡大により、原料となる大麦の安定供給が困難になっていることを、これまで本サイトで報じてきた。この解決策のひとつとして、遺伝子複製技術による冬大麦の活用が浮上している。英スコットランド・アバディーンにあるジェームズ・ハットン研究所が「インプロモルト・プロジェクト」と題して、研究を進めているのだ。研究費用は200万ポンド(約3億円)に上る。

DNA PROFILING TO CREATE ‘SUPER BARLEY’ FOR SCOTCH(スピリッツビジネス)
http://www.thespiritsbusiness.com/2014/04/dna-profiling-to-create-super-barley-for-scotch/

 ウイスキーは、収穫量が豊富で丈夫な夏大麦(※)を原料とすることが多い。インプロモルト・プロジェクトでは、ヒトの指紋採取からDNAを複製し鑑定するという犯罪捜査で用いられる手法を応用し、夏大麦が持つ丈夫さを冬大麦(※)の性質に組み込む。すなわち、ウイスキー生産に適う冬大麦をつくることが目標だ。

 また、近年たびたび起こっている異常気象に対応する目的もある。ヨーロッパでは夏季の干ばつが問題となっているといい、この場合、夏大麦の成育が速くなりすぎるためモルティング後の品質が劣る。だが、冬大麦にも夏大麦と同様の特性を与えれば、異常気象のリスクを軽減できるという算段だ。

 研究者によるものか、元記事著者が考案したものかは明確でないが、この研究で生み出される大麦を「スーパー・バーリー(バーリーは大麦の意)」と称する。研究は、2018年まで行われる予定。

 農薬等のコスト削減を目的とした遺伝子組み換え作物とは異なるものだと思われるが、ぜひ、安全面にも考慮しながら開発を進めてほしいものだ。

プロジェクト責任者、ジェームズ・ブロスナン博士の話(スコッツマン日曜版にコメントしたもの):
「スコットランドで、これまでより多くの時間を大麦の成育に充てられるようになる。この挑戦は、未来のためだ。春大麦(※)を収穫するために割く時間は、かなり短い。さらに、気候やその他の成育するのに必要となる要因が悪化すれば、作物に加わる衝撃は相当大きなものとなる。産業の拡大を成し遂げるための挑戦だ。世界中で成功を続けるスコッチ・ウイスキーのために、より多くの大麦が利用できるようになることを期待する」

研究費を拠出するスコットランド政府スポークスマンの話:
「インプロモルト・プロジェクトは、(スコットランド)経済において重要であるモルティング産業、蒸留産業への、大麦のサプライチェーンを弾力的に拡大できるもの。モルトの十分な供給はスコッチ・ウイスキー産業を支援することになるし、研究の結果がスコットランドの農家を支援することにもなる」

※夏大麦、冬大麦という名称は元記事によるもので、収穫時期から採られたものと思われる。ブロスナン博士のコメントにあるとおり、播種時期から春大麦、秋大麦という呼び方もする。


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2014年4月14日月曜日

英業界団体、カラシニコフを模したウオトカにパッケージ変更を勧告(スピリッツビジネス)

 英国の酒類生産者団体であるポートマングループは9日、バルテクス・バルトル(Bartex Bartol、ポーランド)が生産するウオトカ(ウォッカ)「レッドアーミー」に対し、パッケージを変更するよう勧告した。レッドアーミーのパッケージが北アイルランドで設けられている販売基準に反するとの声があり、ポートマングループ内のインディペンデント・カムプレインツ・パネル(独立苦情協議会、ICP)が調査。「暴力や危険な反応などの事態との関係性がある」と判定したためだ。

 レッドアーミーは赤軍を意味し、冷戦時に旧東側陣営の国が多用した銃であるカラシニコフAK-47に似たボトルとなっている。また、同商品のラインナップにある「ギフトパック」(写真)では、手りゅう弾を模したデカンタグラスと6つのショットグラスを同梱する。

 問題となる販売基準には「商品やパッケージ、プロモーション媒体・活動などでは、偽り、暴力、攻撃性、危険性、反社会性を直接的、間接的問わず、関連づけてはならない」と明記。これを基にICPは、「当該ブランドのパッケージと商品名は、大衆にAK-47を連想させ、アルコール飲料としては不適切だ。AK-47は武器であり、テロと暴力の象徴であり、ゆえに暴力、攻撃、危険との直接的関係性がある」と判定した。

 ポートマングループは、北アイルランド地域の小売業者にレッドアーミーの在庫を持たないよう通達するとともに、メーカーのバルテクスに対しては6月19日までにパッケージを変更するよう勧告している。バルテクス側は「暴力とは無関係」と、現時点では商品を守る意向を示している模様。

GUN-SHAPED RED ARMY VODKA BOTTLE BANNED(スピリッツビジネス)


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2014年4月11日金曜日

2013年のスコッチ・ウイスキー輸出、横ばいの結果に――SWA発表(BBC)

David Frost スコッチ・ウイスキー協会(SWA)は11日、2013年のスコッチ・ウイスキー輸出統計を発表した。輸出総額は43億ポンド(約7300億円)で前年と同額、数量ベースでは12億3000万本(公式発表では13億本)で前年比=2.5%増だった。

Scotch whisky exports remain flat(BBC)
http://www.bbc.com/news/uk-scotland-scotland-business-26974320

 地域別に見ると、米国がこれまでと同様、金額ベースで最大の輸出先となっており、輸出額は8億1900万ポンド(約1400億円)、前年比=8%増となった。だが、数量ベースでのトップは仏となり、前年比=16%増となっている。SWAはこの理由を、2012年初頭に行われた仏のウイスキー増税が一段落したため、と見ている。

 アジア圏ではインドが好調で、数量ベースで12%増と世界4番目の輸出先になった。SWAは、現在停止しているEU・インド間の自由貿易協定交渉が再開するよう、関係各所に働きかける意向の模様。一方で、中国は前年比=30%減(数量ベース)と凄惨たる結果となっている。昨日、本サイトで報じたLVMHの四半期決算と同じく、習近平政権による腐敗防止策が大きく影響したためだと、SWAは説明する。日本、台湾、韓国向け輸出は、それぞれ13〜15%落ち込んでいる(金額ベース)。

 ただ、新興国においては依然、好調を見せており、ブラジル、メキシコ向けは共に前年比=20%増、ポーランド向けは同=38%増となった(いずれも金額ベース)。

 SWAのデーヴィッド・フロスト会長(写真)は「スコッチ・ウイスキーの輸出は堅調で、英国の通商に貢献している。今後も、空前の投資プログラムを継続する」とコメント。その一方で、政府に対して厳しい注文もつけた。
「大使経験者として申し上げると(註:フロスト会長は元外交官)、ウイスキー産業は政府による強力な政策によって成り立つ。これまで、連合王国政府もスコットランド政府も、重要な役割を果たしてくれた。スコットランド独立の国民投票結果がどうであれ、200ヶ国に上る市場を持つ産業としては、商業的専門性を持ち、影響を与えるだけのキャパシティを持った、グローバルに届く効果的な外交ネットワークを必要とする」

 スコッチ・ウイスキーの輸出額はスコットランド産飲食物輸出額の85%を占め、英国全体の飲食物輸出額と比較しても4分の1に上る。フロスト会長の発言は、こうした事実を背景に連合王国政府、スコットランド政府が実施・検討するアルコールへの課税策・案に対して、さらに、仮にスコットランドが独立したとしても公的支援を受けられるよう、けん制するねらいがあるものと見られる。


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SWAによる公式発表(英文)
スコッチ・ウイスキー協会、新会長にフロスト氏――元外交官(ハーパーズ)
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2014年4月10日木曜日

LVMH、第1四半期決算を発表――酒類部門は落ち込み(マレーシアンダイジェスト)

The Glenmorangie Compagny
コニャックだけでなく「グレン
モーレンジ」「アードベッグ」
もLVMH傘下の商品
 モエ・ヘネシー・ルイヴィトン(仏、LVMH)は9日、第1四半期決算を発表した。売上高=72億ユーロ(約1兆円)で前年同期比=6%増(※)だった反面、ワイン&スピリッツ部門では売上高=8億8800万ユーロ(約1250億円)に留まり、こちらは前年同期比=3%減(※)。アパレル部門が酒類部門の不調を補う形となった。

 同社は酒類関係の落ち込みを、中国政府の規制によるものとしている。これまで中国の酒類市場においては、旧正月の贈答品としてスピリッツ、特にコニャックの売上が増える傾向にあったが、腐敗・汚職防止を目的に習近平政権が高級品の贈答を規制。金融リサーチ企業であるサンフォード・C・バーンスタインのトレヴァー・スターリング・アナリストは「早くとも2015年まで、この規制が消費に影響する」と予測する。

 なお、LVMHは通例として、第1四半期の損益を発表していない。

※ネット数値

LVMH’s Accelerating Fashion Sales Help Cushion Alcohol Decline(マレーシアンダイジェスト)


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2014年4月9日水曜日

ジン「ボンベイアンバー」がリリース――フレンチ・ベルモット樽で熟成(スピリッツビジネス)

 バカルディ(英領バミューダ諸島)は、ジン「ボンベイアンバー」をリリースする。アンバー(琥珀)という商品名のとおり、フレンチ・ベルモット樽で熟成したもの。トラベル・リテール(用語解説参照)商品として販売し、シンガポール・チャンギ国際空港を皮切りに、各国の空港で販売する。

 ボンベイサファイアのリチャード・カスバート・グローバルマーケティングマネージャーは、ボンベイアンバーの登場を、「大きな進化」で「ジン・カテゴリーにおける価値創造を担う」とした上で、次のようにコメントする。
「ボンベイアンバーはイノベーションを果たしたことで、他商品との差別化、プレミアム化ができた。ジンを飲まない人でも、ほかの商品とは異なるボンベイアンバーを楽しんでいただけると思う」

 ボンベイアンバーはアルコール=47%、700ミリリットルボトル。シンガポールでの販売価格は55シンガポールドル(約4500円)。4月中にシドニーで、来月にはラスベガス、トロントの空港でも発売する。

BACARDI LAUNCHES BOMBAY AMBER CASK-RESTED GIN(スピリッツビジネス/リンク先に画像あり)


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2014年4月8日火曜日

デーヴィッド・ベッカム氏、シングルグレーン・ウイスキーのアンバサダーに――年内発売のディアジオ新商品(ドラム)

 サッカー・イングランド代表として活躍したデーヴィッド・ベッカム元選手が、ディアジオ(英)新商品のアンバサダー(大使)に就任する。年内にも発売される新商品「ヘイグクラブ(Haig Club)」はシングルグレーン・ウイスキーで、ディアジオはプレミアムカテゴリーのブランドとして位置づける方針だ。

 ヘイグクラブの「ヘイグ」とは、ブレンデッド・ウイスキー「ヘイグ」のジョン・ヘイグ、あるいは、その祖先であるロバート・ヘイグの一族を指す。現在、法人としてのジョンヘイグ社はディアジオの傘下にあることから、新たなプレミアムブランドとして名門であるヘイグの名を冠したものと見られる。

 なお、今回のジョイントには、ベッカム氏のマネージャーであるサイモン・フラー氏の影響も大きいようだ。実業家であるフラー氏は、エンターテインメント業界の大物として知られ、ベッカム氏のほかスパイスガールズ(ベッカム氏の妻、ヴィクトリア氏もかつて在籍)のプロデュースも行っていた。

 フラー氏は「(今回のプロジェクトには)長期間に亘って関わっていく。我々にとって重要なのは、ユニークで素晴らしいクオリティのものをつくること。これはエキサイティングな案件だ。そして、ディアジオ以外にふさわしいパートナーはいない」とコメントした。

Diageo partners with David Beckham for new Scotch Whisky launch(ドラム)


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2014年4月6日日曜日

ディアジオがヘヴンヒルを提訴――ラムの意匠権問題で(ドリンクスビジネス)

 ラムの意匠権を巡り、ディアジオ・カナダがヘヴンヒル(米)を訴えた。ディアジオ側は同社のラム「キャプテンモルガン」(写真左)のラベルデザインやキャラクターを、ヘブンヒルのラム「アドミラルネルソン」(写真右下)が模倣していると主張。3月26日、カナダ連邦裁に対して正式に提訴した。

 キャプテンモルガンは、17世紀に活動した英国の海賊、ヘンリー・モーガンにあやかってつくられたスパイスト・ラム。年間1980万ケースを出荷し、スパイスト・ラム市場では世界最大のブランドだ。

 一方のアドミラルネルソンは、ヘヴンヒルがルクスコ(米)という会社から2011年に取得したラム・ブランドで、米国内では年間80万ケースを出荷。記事やオフィシャルサイトでは触れられていないが、おそらく18〜19世紀に英国の海軍士官であったホレーショ・ネルソン提督をモチーフにしているものと思われる。

 ディアジオ・カナダのイアン・チャルマース副社長(マーケティング担当)は、次の声明を発表している。
「ディアジオはこのように考える――継続的なイノベーションが消費者の関心を呼び、産業の健全な競争につながる、と。我々は、キャプテンモルガンのラベルデザインとキャラクターをコピーする競争者に、強く抗議する。我々はいついかなるときも、こうした侵害者と戦う」

 また、元記事のドリンクスビジネスはヘヴンヒルにコメントを求めたが、回答は得られなかったという。

DIAGEO SUES ‘COPYCAT’ ADMIRAL NELSON’S RUM(ドリンクスビジネス)


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2014年4月5日土曜日

ブラウンフォーマン、レミーコアントローに出資か?――金融関連ブログが記事配信(ガーディアン)

 米酒造ブラウンフォーマンがレミーコアントロー(仏)に出資すると報道されている。金融関連ブログの『Betaville』が発端で、すでに投資銀行が仲介に入っているとの記事を配信した。これを受け、レミーコアントローの株価は4日、終値=61.2ユーロ(約8750円)と前日比3.6%上昇している(ユーロネクスト・パリ)。

 今回の背景には、以下の2点が影響している。

 ひとつは、今年1月のサントリー(大阪/世界本社=東京)によるビーム(米)買収だ。この買収案件が業界再編の嚆矢になるのではないかとの見方があり、市場ではブラウンフォーマンとバカルディ(英領バミューダ諸島)の経営統合が行われる、といった見方もあった。

 もうひとつの背景は、レミーコアントローの業績が下落する可能性が高いことが挙げられる。同社の2014年3月期決算は17日に発表される予定だが、これまで大きな商機となっていた中国の旧正月(2014年は1月31日)での売上が落ち込むと予想される。なぜならば、習近平政権が腐敗防止を目的に高級品の贈答を制限したからだ。冒頭で挙げたレミーコアントローの株価も、1年前は80ユーロ台で推移しており、投資家からの同社に対する懸念は顕著だ。

 一方、レミーコアントローはコニャック「レミーマルタン」だけでなく、スコッチ・シングルモルト「ブルイックラディ」、ラム「マウントゲイ」などのブランドを保有する。こうした側面から、規模拡大を図りたい企業にとってレミーコアントローを「買い時」と捉えるのは、自然なことだろう。

 今回のできごとの信憑性については、各メディアが『Betaville』をソースとした記事しか発表していないため、現時点で疑問符をつけざるを得ない状況ではある。しかし、業界再編が予想される中、今後も同種の話が出てくる可能性は高い。

Rémy Cointreau shares soar after talk of match-up with Jack Daniel's maker(ガーディアン)


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サントリーのインド進出、その課題とは(日経他)

2014年4月4日金曜日

ロッホナガーか? エリザベス英女王、フランシスコ・ローマ教皇にウイスキーを贈る(ロイター他)

 エリザベス2世英女王(写真左)、エジンバラ公フィリップ王配夫妻は3日、ヴァチカンを訪問し、フランシスコ・ローマ教皇(写真右)と会談した。両者が顔を合わせるのは今回が初めてで、英女王がヴァチカンを訪れるのは2000年に故ヨハネ・パウロ2世教皇と会談して以来、14年ぶり。

 今回の訪問で、女王夫妻はバッキンガムやサンドリンガムなどといった宮殿とゆかりのある18品を持参。ハチミツやアロマテラピー・ソープ(石鹸)とともに、ウイスキー、ビール「コロネーション・ベスト・ビター(コロネーションは戴冠式の意)」が教皇に贈られた。

 贈られたウイスキーの銘柄について、各メディアとも具体名を挙げておらず、発表されている写真から判別することもできない。だが、英女王は「バルモラル(城)からのもの」と発言している。英王室が所有するバルモラル城(スコットランド)から一番近い蒸留所は「ロイヤルロッホナガー」だ。あるいは、ブレンデッド・ウイスキー「ロイヤルハウスホールド」のように、バルモラル城に献上されたり御用達となっているシングルモルト、ブレンデッドが贈られたのかもしれない。

 なお、フランシスコ教皇からは、生まれたばかりのジョージ英王子へ聖エドワードの銀の十字あしらわれたラピスラズリの球体が贈られたという。

Britain's Queen, meeting pope, gives him eggs, whiskey, beer(ロイター) Whisky and Honey: Queen and Pope exchange gifts in historic Rome meeting(エクスプレス)


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エリザベス女王、海軍にラムを下賜(プレスアソシエーション) スコッチ・ウイスキーの輸出額、過去10年で87%増――政府発表(ドリンクスビジネス)

2014年4月3日木曜日

グランツ社の奨学金プログラム、19歳の青年を選出(ドリンクスビジネス)

 スコッチ・シングルモルト、ブレンデッド・ウイスキーを生産するウィリアムグラント&サンズ(英スコットランド、グランツ社)は、「イアン・マレー・スカラシップ」という奨学金プログラムを開始した。昨年亡くなった、イアン・マレー・リテールマネージャーの遺志・遺産を受け継ぐ趣旨で始まったもの。奨学生はグランツ社、ならびに、関連会社でウイスキーについてを学び、将来のウイスキー産業を担う若い世代を育成する。

 第1回の奨学生は今年1月、審査が行われ、イングランド・ウェストミッドランズ出身のジェロム・マークス-ガードナーさんが選ばれた。弱冠19歳の青年だ。

 マークス-ガードナーさんを選んだ理由について、審査を行ったカーステン・グラント・ミクル氏(5世代目にあたるウィリアム・グラントの子孫)は、次のようにコメントしている。
「彼はプログラムをフルに活用できるだけの情熱を持ち、勝者となるにふさわしかった。彼自身、(酒は)家業であり、私は彼に、我々の家業に関わってもらいたいと思った」

 カーステン氏のコメントにあるとおり、マークス-ガードナーさんの家族はニコルス&パークスという酒類小売業を営んでいる。小さい頃から酒に近い環境にあり、知識の豊富さやテイスティングの正確さ、さらに酒をつくり売ることへの情熱が審査員に好印象を与えたようだ。

 マークス-ガードナーさんは、すでにグランツ社やその子会社である販社ファーストドリンクスで働きながらウイスキーを学んでいる。また、酒類業界の資格であるWSET(リンク参照)レベル1・2取得も目指す。

「彼(イアン・マレー氏)は、市場が何に注目しているかを判別するという、非常に優れた才能を持っていた。私は彼のようになりたい。今回のスカラシップによってスキルを上げるチャンスを得たわけで、これは私の商売の価値を上げるものだ」とは、マークス-ガードナーさんの弁。

 もしかしたら将来、ウイスキーの先端を伝道する人として、マークス-ガードナーさんは世界に、そして日本にも訪れるのかもしれない。

※英国では、家庭内で保護者が管理する下であれば、5歳から飲酒が可能。酒類を購入できる最低年齢は18歳で、今回のプログラム応募資格は18〜30歳だった。

19-YEAR OLD SCOOPS WHISKY SCHOLARSHIP(ドリンクスビジネス)


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2014年4月2日水曜日

NCAAバスケ大会で「バーボン」vs「ビール」対決――ケンタッキー/ウィスコンシン両州知事が「賭け」(クーリエジャーナル)

 全米大学体育協会(NCAA)男子バスケットボール選手権の準決勝が今週5日、行われる。そのうち1試合は、ケンタッキー大学”ワイルドキャッツ”対ウィスコンシン大学”バジャーズ”のカード。この対決を前に、コートの外にも注目が集まっている。というのも、両チームの地元州知事がそれぞれ「バーボン・ウイスキー」「ビール」という地元特産品を賭けているのだ。

Governors wager beer, bourbon on Kentucky-Wisconsin(クーリエジャーナル)
http://www.courier-journal.com/story/sports/college/kentucky/2014/04/01/governors-wager-beer-bourbon-kentucky-wisconsin/7165197/

 『クーリエジャーナル』によると、ケンタッキー大が勝った場合はスティーブ・べシャー・ケンタッキー州知事からスコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事に「完璧なケンタッキー・バーボン・バー」を贈る(おそらくバーボンとグラスなどの器材一式ではないかと思われる)。逆の場合は、ウォーカー州知事がビール、ブラットブルスト(豚のソーセージ)、チーズをベシャー州知事へ贈るのだという。負けた方が贈るべきようにも感じられるが、勝ったことで相手の健闘を称える、あるいは逆に、相手の土地へ「攻めこむ」などの意味合いがあるのかもしれない。

 ベシャー・ケンタッキー州知事は「ワイルドキャッツは今年、彼らができるベストなプレイをしてきた。だから、4強に残った。ジョン・カリパリ(ケンタッキー大)とボー・ライアン(ウィスコンシン大)という2人の素晴らしいコーチの対決を見られるのは、本当に楽しみ。だが、ケンタッキーがバジャーズを上回っているのは、明らかだ」と自信を見せる。

 一方、ウォーカー・ウィスコンシン州知事も「今シーズンのバジャーズはアン”ボー”リーバボーだ」と、ライアン・コーチのファーストネームとアンビリーバボーを掛けた上で、次のようにコメントしている。
「2つの素晴らしいチームと、それぞれの素晴らしいファンによってなされる今回の対決は、記録に残ることだろう。ライアンというリーダーの下に、非常に優秀な才能を持ったプレイヤーが集まった。バジャーズの持つ勢いとスキルは、必ずやケンタッキー大を抑え、決勝へ進む」

 米国はプロだけでなく大学スポーツも盛んで、NCAA大会は日本の高校野球のような人気を得ている。各大学の地元からの応援も熱狂的だ。バーボンとビール、どちらが勝つか、それぞれの州のファンが固唾を飲んで成り行きを見守っていることだろう。


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2014年4月1日火曜日

【お知らせ】きょうの記事について

 きょう掲載の記事「G&M『コニサーズチョイス・森伊蔵』をリリース――業務提携を記念して」はエイプリルフールネタでした。

 毎年くだらないことしてすみません。でも、もうネタ切れです……来年はできないかも……

G&M「コニサーズチョイス・森伊蔵」をリリース――業務提携を記念して

「コニサーズチョイス・森伊蔵
1991・シェリーウッドフィニ
ッシュ」のラベル写真(クリッ
クすると拡大)
 ボトラー大手のゴードン&マクファイル(英スコットランド、G&M)は1日、焼酎メーカーの森伊蔵酒造(鹿児島)と業務提携することで合意したと発表した。日欧双方でのマーケティング面での協力や技術面での交流を進めていくという。

 G&Mは1895年創業で、スコッチ・シングルモルトのボトリングを主業とするほか、ベンロマック蒸留所の親会社でもある。一方、森伊蔵酒造は1885年創業で、2000年頃から芋焼酎「森伊蔵」が人気に。ネットオークションでは定価を1万円以上超える価格で取引されている。

 G&Mのルーフル・リプイエ・ブランディングディレクターは、次のようにコメントした。
「ジャパニーズ・スピリッツのトップブランドである森伊蔵と共に仕事ができることを、とてもエキサイティングに感じている。様々な方法を通してヨーロッパの消費者に芋焼酎の素晴らしさを伝えたいし、森伊蔵にとっても我々とジョイントすることで新たな酒づくりのエッセンスを得てもらえれば、と思う」

 また、今回の業務提携を記念し、G&Mは「コニサーズチョイス・森伊蔵1991・シェリーウッドフィニッシュ」をリリースする。森伊蔵の伝統的製法であるかめ壺での3年熟成を経た後、シェリー樽熟成させたもの。なお、原酒は森伊蔵酒造がG&Mに販売・譲渡したものではなく、リプイエ・ディレクターが個人的に保有していたものだという。
「私は学生時代に日本に留学していたが、そのとき森伊蔵の酒蔵に体験入門した。アーティザナルな製法と味に惹かれて原酒を購入したのだ。カスク1個分を満たせる量を購入するのは、当時、若かった私としては大きな決断だったが、今回、消費者の皆様にお披露目することができ、喜びを感じている」

 同商品は700ミリリットルボトルでアルコール=46%、150本の限定販売で10〜20本が日本に流通する予定。


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東京ディズニーシーに「カリラの海賊」オープン――レストランではシングルモルト「カリラ」限定版も