2014年4月15日火曜日

アバディーンの研究所、科学捜査を応用した大麦開発へ――ウイスキー需要拡大による原料不足を背景に(スピリッツビジネス)

 スコッチ・ウイスキーの需要拡大により、原料となる大麦の安定供給が困難になっていることを、これまで本サイトで報じてきた。この解決策のひとつとして、遺伝子複製技術による冬大麦の活用が浮上している。英スコットランド・アバディーンにあるジェームズ・ハットン研究所が「インプロモルト・プロジェクト」と題して、研究を進めているのだ。研究費用は200万ポンド(約3億円)に上る。

DNA PROFILING TO CREATE ‘SUPER BARLEY’ FOR SCOTCH(スピリッツビジネス)
http://www.thespiritsbusiness.com/2014/04/dna-profiling-to-create-super-barley-for-scotch/

 ウイスキーは、収穫量が豊富で丈夫な夏大麦(※)を原料とすることが多い。インプロモルト・プロジェクトでは、ヒトの指紋採取からDNAを複製し鑑定するという犯罪捜査で用いられる手法を応用し、夏大麦が持つ丈夫さを冬大麦(※)の性質に組み込む。すなわち、ウイスキー生産に適う冬大麦をつくることが目標だ。

 また、近年たびたび起こっている異常気象に対応する目的もある。ヨーロッパでは夏季の干ばつが問題となっているといい、この場合、夏大麦の成育が速くなりすぎるためモルティング後の品質が劣る。だが、冬大麦にも夏大麦と同様の特性を与えれば、異常気象のリスクを軽減できるという算段だ。

 研究者によるものか、元記事著者が考案したものかは明確でないが、この研究で生み出される大麦を「スーパー・バーリー(バーリーは大麦の意)」と称する。研究は、2018年まで行われる予定。

 農薬等のコスト削減を目的とした遺伝子組み換え作物とは異なるものだと思われるが、ぜひ、安全面にも考慮しながら開発を進めてほしいものだ。

プロジェクト責任者、ジェームズ・ブロスナン博士の話(スコッツマン日曜版にコメントしたもの):
「スコットランドで、これまでより多くの時間を大麦の成育に充てられるようになる。この挑戦は、未来のためだ。春大麦(※)を収穫するために割く時間は、かなり短い。さらに、気候やその他の成育するのに必要となる要因が悪化すれば、作物に加わる衝撃は相当大きなものとなる。産業の拡大を成し遂げるための挑戦だ。世界中で成功を続けるスコッチ・ウイスキーのために、より多くの大麦が利用できるようになることを期待する」

研究費を拠出するスコットランド政府スポークスマンの話:
「インプロモルト・プロジェクトは、(スコットランド)経済において重要であるモルティング産業、蒸留産業への、大麦のサプライチェーンを弾力的に拡大できるもの。モルトの十分な供給はスコッチ・ウイスキー産業を支援することになるし、研究の結果がスコットランドの農家を支援することにもなる」

※夏大麦、冬大麦という名称は元記事によるもので、収穫時期から採られたものと思われる。ブロスナン博士のコメントにあるとおり、播種時期から春大麦、秋大麦という呼び方もする。


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