2012年6月5日火曜日

グランツ社ステラ・デイビッドCEOインタビュー①(アイリッシュタイムズ)

「カレンダーの数字が赤い日は、家でダーツをしている。下手糞だけど」
ときにはソファに寝そべって、スライスしたキュウリを片手に「ヘンドリクス・ジン」を飲む。
このときも、テレビでダーツの試合を観るという。
「ヘンドリクスとスライスしたキュウリは本当によく合う」
日本人的な感覚からすればお洒落に感じるかもしれないが、元記事の見出しにあるように、生活観はヨーロッパの労働者階級のそれに近い。
しかし彼女は、英国酒造大手のCEOだ。

アイルランド紙、アイリッシュタイムズが行なったウィリアム・グラント&サンズ(グランツ社)、ステラ・デイビッドCEOのインタビュー記事を2回に分けて掲載する。

Whiskey galore for Tullamore(アイリッシュタイムズ)

日本はもちろん、アイルランドにおいても彼女の名は知られていない。
しかし、彼女はアイルランド・オファリー州に3,500万ユーロ(約34億円)投資することを決定した人物だ。

2010年にアイルランドのC&Cグループから、アイリッシュ・ウイスキー「タラモアデュー」を1億7,100万ユーロ(*)で買収したことを振り返り、デイビッドCEOは「とてもいい値段だった」と振り返る。
しかし、タラモアデューはオファリー州タラモアに由来する名でありながら、今はミドルトン蒸溜所でつくられている。
正確にいえば1954年まではタラモアで生産されていたが、アイリッシュ・ウイスキー・メーカーの大合併で、以後、ミドルトンなど他のブランドと一緒につくられるようになった。
また、ミドルトン蒸溜所を保有するのはディアジオに次ぐ大手ペルノリカール(仏)。
タラモアデューはペルノリカールと契約を結んだ上で、生産されている。
「私たちはタラモアデューが未来に亘って成功するために、投資している。5〜6年といった短期のブランド保有を考えているわけではない」

かくして、彼女はオファリー州に新たな蒸溜所をつくることを決断した。
58エーカー(約2万3500平米)の土地を取得し、生産設備のほか、ビジターセンターを設ける。
地元への雇用創出だけでなく、観光資源としての活用も期待できる。

現在、ヨーロッパは金融不安の渦中にあり、なかでもアイルランドはスペインなどとともに、日本においても危機が報じられる。
しかし、グランツ社の取締役会において「心配する声はなかった」とデイビッドCEOは言う。
というのも、タラモアデューは2011年度に70万ケースを出荷しており、これは前年比で15%増という数字だ。
なかでも米国での売上は芳しく、8万ケースが米国向け出荷、またアイリッシュ・ウイスキー全体で見ても170万ケースを米国に出荷しており、こちらは前年比24%増となっている。
今回の投資は、成長が見込める自然な流れの中でのものだ。

なお、デイビッドCEOは「ジェイムソン(ペルノリカールが保有するアイリッシュ・ウイスキー・ブランド)はインターナショナルで、コスモポリタンな印象を受ける。一方で、タラモアデューはアイルランドの歴史的アイコンといった感じ」と比較する。
そして、こうも付け加える。
「アイリッシュ・ウイスキーはスコッチ・ウイスキーと比べると、小さく見えるかもしれない。だけど、それは正しくない。グローバル市場でアイリッシュ・ウイスキーは過小評価されている。可能性があるカテゴリーなのに、それに比べると評価は本当に小さい」

(あすへつづく)


(*)元記事による。本サイト3月29日掲載の記事では同ブランドの買収額を「2億5千万ポンド」としたが、こちらもBBCの元記事が根拠。この2つの数字に整合性が取れないことにつきご容赦いただきたい。
なお、1億7100万ユーロを当時のレートで換算すると19億円〜20億5千万円程度となるため、これも以前の記事との整合性がない。


<関連記事>
タラモア・デュー、故郷に帰る——グランツ社がオファリー州に新蒸留所建設(BBC)

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