2014年3月6日木曜日

サントリーのインド進出、その課題とは(日経他)

 インド酒造ラディコカイタンが設立する販社にサントリーも参加すると、複数メディアが報じた。インド紙タイムズオブインディアはサントリーが500クローレ(約84億円)を出資し26%の株式を取得すると報道、日本経済新聞(日経)の記事は100億円前後、20%超の出資としている。

 設立される新会社はラディコカイタンが生産するウオトカ(ウォッカ)「マジックモーメンツ」、ウイスキー「8PM」(写真)、ブランデー「オールドアドミラル」のインド国内での流通を担当。以上のブランドから見込まれる販売額は年間2000クローレ(約330億円)に上る。すでにラディコカイタンはサントリーのブレンデッド・ウイスキー、シングルモルト・ウイスキーの代理店であるが、サントリーとしては流通、マーケティングに関与することで中間層にも商品を訴求したい意向と見られる。

 日本・インドの間では2011年に経済連携協定(EPA)が発効し、アルコールを含む飲食料品は関税撤廃の対象となっている。一方で、EUとインド間の自由貿易協定(FTA)は現在交渉中、本サイト調べでは米国との協定・交渉は確認できないことから、出資が実現すればサントリーがインド市場をリードする可能性が生まれる。

 ただし、全てが順風満帆なわけではない。

 日経の報道では「ウイスキーを核としたラディコ(カイタン)の事業モデルが、サントリーが進めるグローバル戦略と親和性が高いと判断したもようだ」としている。インドはかつて大英帝国の支配下にあったことから、現在でもウイスキーの人気が高く、ビーム買収などに代表されるサントリーのグローバル戦略において要衝となることは事実だ。

 しかし、インドではスコッチ・ウイスキー、バーボン・ウイスキー、あるいはジャパニーズ・ウイスキーのようにモルトなどの穀物を原料としたウイスキーは一般的ではない。そのようなウイスキーは価格が高く、また前述のとおり輸入品となると高い関税(スコッチ・ウイスキーの輸入関税は150%)が課されるからだ。そのため、インド国内で流通するウイスキーは糖蜜が主原料となっているものがメジャーである。

 よって、サントリーが現実に出資した場合、経営戦略の幅が広がり新たなポテンシャルも生まれる一方、これまでの市場とは異なるマーケティングが求められる、といえるだろう。

サントリー インド洋酒会社に出資へ(日本経済新聞/紙面参照のためリンクなし)
Suntory readies Rs 500 crore swig of Radico brands(タイムズオブインディア)


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