2013年1月9日水曜日

スコッチ・ウイスキー、ボトル1本=1ポンドの課税案――サモンド首相諮問機関が提言(テレグラフ)

 アレックス・サモンド・スコットランド政府首相の諮問機関、経済識者評議会のメンバーが、ウイスキーに対する新税導入を提言している。1本のボトルを生産する毎に1ポンド(約140円)を課すもので、総計10億ポンド(約1400億円)の税収を見込む。一方、酒造業界からは反発の声が挙がっている。

New whisky tax 'would raise £1bn for Scotland'(テレグラフ)

Photo of John 新税を提唱するのは経済学者ジョン・ケイ氏(写真)と、ロイヤルバンクオブスコットランド会長のジョージ・マシューソン男爵。

 ケイ氏によれば南米、アフリカなど新興国市場でウイスキーの消費が伸びながらも、スコットランドの財政への還元は「期待外れ」であると主張する。
「酒造大手はスコットランドに本拠を置いていない。彼らが生み出す利益の多くは、スコットランド以外に住む人々へもたらされる。そして、彼らはスコットランドでは納税せず、連合王国政府に納税するとも思えない(ケイ氏)」

 ケイ氏が述べるのは多くの蒸留所を傘下に収めるディアジオ(本社=ロンドン)などへの批判だ。スコットランド・ペイズリーに本社を置くシーバスブラザーズも、ペルノリカール(仏)の子会社となっている。また、人気シングルモルト「ラフロイグ」「ボウモア」をそれぞれ保有するビーム(米)、サントリーもこの批判に当てはまる。

 提言では、蒸留所は年間50億ポンド(約7000億円)を生み出すとし、5億ポンド(約700億円)を人件費、15億ポンド(約2100億円)を原材料費などの経費だと試算する。よって利益は30億ポンド(約4200億円)に上るとし、10億ポンドの課税は適正であるというのがメンバーの見方だ。課税によって販売価格が値上がりする可能性についても「値上がり幅が価格の中で大きなパーセンテージを占めるわけではない。ウイスキー産業に損害を与えたり、今後の成長を阻害するものではないと考える(マシューソン男爵)」と主張する。

 対してディアジオのピーター・レデラー・ディレクターは「そのビジネスが成功しているからといって課税に動くというのは、間違ったものだという印象を受ける」と反発の声を挙げる。また、スコッチ・ウイスキー協会のギャビン・ヒューイット会長は、スコッチ・ウイスキーが国際市場において他のスピリッツと激しい競争を行なっているとしながら、次のように牽制する。
「スコッチ・ウイスキー以外のスピリッツは安価に生産され、安価に売られる。(課税案は)スコッチ・ウイスキーの国際市場での競争力を削ぐものだ。この4年間、我々は(見込まれる税収と同額の)10億ポンド以上の投資をした。今後3〜4年も20億ポンド(約2800億円)規模の投資をしていく」

 今回の課税案とは別に、連合王国政府も酒類に対する「ミニマムプライス(最低価格)」導入を進めており、こちらも酒造業界は反発している。ただ、ミニマムプライスは英国内での販売に課せられるものであるのに対し、新税は輸出商品も含めた生産に課せられるものになりそうだ。そのため課税が実行された場合は、マシューソン男爵の言葉どおり僅かかもしれないが、スコッチ・ウイスキーの価格が世界的に値上がりすることになると思われる。


<関連記事>
スコッチ・ウイスキーの経済効果は5800億円――SWA・コンサルティング会社が分析(BBC他)
英国、アルコール飲料への最低価格導入へ——酒類業界は反発(USフロントライン他) 「スコットランドが独立するならば、連合王国はウイスキー輸出を支援しない」——ウィリアム・ヘイグ外相(メイル)

0 件のコメント:

コメントを投稿