2013年2月25日月曜日

シャンパン業界の前にそびえる、中国の「壁」(ブルームバーグ)

クリスマス シャンパン
 夜の上海。植民地時代(註:元記事による。かつての列強国の租界地区を指していると思われる)の面影を残す大通りに面したバーラウンジは、賑わいを見せる。1万元(約15万円)を支払うと6リットルのシャンパン、3リットルのウオトカ(ウォッカ)、そしてソフトドリンクが氷の器に入れられ、バーに雇われた6人のダンサーによって運ばれてくる。
「シャンパンを飲まない人でさえ、このショーを見るために金を支払う」
そう語るのは、バーを運営するヴィジュアル・オリエント・リミテッドのマチュー・ブラウアー(Mathieu Brauer)CEOだ。

Champagne in China Seen Failing to Match Cognac Cachet(ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.com/news/2013-02-24/champagne-in-china-seen-failing-to-match-cognac-cachet.html

 コニャックが中国に初めて輸入されたのが1859年であるのに対し、シャンパンが同国市場で一定の地位を得たのは、ごく最近のことだという。「中国のシャンパン市場が変わるときが来た」とペルノリカール(仏)のシャルル・アルマン・ド・ベレネ(Charles-Armand de Belenet)シャンパン・マーケティング責任者は息巻く。中国は、ペルノリカールが保有するシャンパン・ブランド「ムーム」にとって世界2位、同「ペリエジュエ」にとって世界3位の輸出先だ。

 これに「シャンパン・メーカーは、中国市場に過大な期待を持っている。(同市場において)シャンパンはプッシュしていくのが難しい商品だ」と語るのは、市場調査企業ミンテルのポール・フレンチ・アナリスト。同アナリストは同じ仏国の商品でも、シャンパンにはコニャックほどの力はないと、否定的な見方を示す。

 この見解を考察するには、まず中国のシャンパンとコニャック、それぞれの市場規模を認識しなければならない。2011年の同国内でのシャンパン販売量は90万リットルであったのに対し、コニャックのそれは2550万リットル(市場調査企業「ユーロモニター」発表)。価格帯や市場内での歴史といった種々の要素もあるため、一概に比較するわけにはいかない。しかし、同じ高級商品カテゴリーでの「醸造酒」と「蒸留酒」という物差しで測った場合、この開きは実数以上のものであるとも見受けられる。

 どちらも仏国産の商品であるのに、なぜ、これほどの開きが出るのか――中国でコニャックが最も売れる時期は、旧正月前後だ。日本におけるお歳暮のごとく、旧正月の中国人たちは親類縁者や仕事上で世話になった人に贈り物をする。この習慣において人気商品となっているのが、コニャック、白酒といった蒸留酒だ。そしてこれらの贈り物を――フレンチ・アナリストに言わせれば「花瓶のように」――棚に飾る。こちらも、かつての日本人が「ジョニ黒」や「シーバス」を応接間の棚に飾っていたことと似ているが、重要なのは、蒸留酒はある程度保存が効く、ということだ。対してシャンパンは、一度開封してしまうと、すぐに消費しなければならない。つまり、開封後のシャンパンは棚に飾っておくことが難しくなってしまう――こうした習慣こそ、先のアナリストが述べた「シャンパン・メーカーの過大評価」という見解の源だ。

 一見、好景気が続いているように見える中国だが、コンサルタント企業ベインによれば30%程度で推移していた高級品市場の伸び率が、2011年には7%に急落したという。また、シャンパンの売上高も2012年は世界全体で4.4%下落した(前年比、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会発表)。

 元記事のブルームバーグは、中国における西洋由来の、高級品の歴史は浅いと記す。中国でシャンパンが浸透するか否かは、今後の酒造企業の戦略にかかっている。

※2月26日追記:ブルームバーグ日本語版を見たところ、一部、翻訳に誤りがあったため、加筆修正しました。

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